ECB、大幅利上げを決定 3月も「0.5%引き上げ」
【フランクフルト=南毅郎】欧州中央銀行(ECB)は2日の理事会で、2会合連続となる0.5%の大幅利上げを決めた。声明文で次回3月も「0.5%の利上げをするつもりだ」と盛り込み、保有資産の削減に向けた具体策を協議した。ユーロ圏はサービスや食品の値上げ圧力が強い。物価安定へ粘り強く利上げを進める。
ECBは主要政策金利を3.00%、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金金利)を2.50%に8日から引き上げる。2022年7月にマイナス金利政策を解除してからは9月、10月に0.75%、前回12月に0.5%の利上げを決めてきた。政策金利は米金融危機後の08年11〜12月以来の高水準となる。

保有資産の圧縮に向けた具体策も議論した。量的緩和政策(APP)で膨らんだ資産を3月から減らし、6月にかけて月150億ユーロ(約2兆1000億円)規模で削減する。保有資産の削減と同時に、社債では償還資金の一部を温暖化ガスの排出削減などに取り組む企業の銘柄に振り向ける方針だ。7月以降の削減ペースは順次判断する。
米連邦準備理事会(FRB)が利上げ幅を0.25%に減速させるなか、ECBはインフレの高止まりを警戒して当面は大幅利上げを続ける構えだ。ラガルド総裁は2日の記者会見で「安定したペースでの大幅利上げ路線を維持する」と強調。次回3月の理事会でも「0.5%の利上げをするつもりだ」と強い言葉で訴えた。
一方、インフレ見通しのリスクは「短期的にはバランスが取れてきている」との認識も示した。中国経済の回復で資源需要が高まる恐れがある半面、足元でエネルギー価格は下落基調にある。次々回5月以降の理事会では「金融政策の道筋を評価する」(ラガルド氏)として、大幅利上げの継続や減速の是非を慎重に検討するもようだ。
問題はユーロ圏のインフレが沈静化に向かうか不透明な点だ。1月の消費者物価指数の伸び率は前年同月比8.5%と、3カ月連続で鈍化した。ただ生活に不可欠な食品は値上げが加速し、エネルギーを除いたベースでも高止まりするなどインフレ基調は衰えていない。先行して物価上昇率が6%台まで鈍化した米国とは距離がある。

さらに賃上げ機運も高まる。12月のユーロ圏の失業率は6.6%と最低水準で推移し、欧州各国ではストライキも相次ぐ。米ゴールドマン・サックスはユーロ圏の賃金上昇率が23年1〜3月期には5%弱と、22年7〜9月期の3%台後半から跳ね上がると予測する。賃上げを通じて個人消費が持ち直せば、サービス価格の上昇が続きインフレはより粘着的になりかねない。
ECB内部では拙速な利上げ減速もリスクを伴うと警戒する声があり、インフレ見通しや利上げペースをめぐり理事会メンバーの意見が分裂する恐れもある。
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