ロシア、ガス供給再開延期 G7価格上限案に反発か

【ベルリン=南毅郎】ロシア国営の天然ガス会社ガスプロムは2日、欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」での供給再開を当面延期すると発表した。背景には欧米による対ロシア制裁への反発がある。主要7カ国(G7)の財務相が2日に合意したロシア産石油の輸入価格上限設定に対抗措置を取った可能性も否定できない。
ガスプロムは送ガス用タービンの定期的な保守・修理を理由に、8月31日から3日間の予定でノルドストリームでのガス供給を停止していた。9月3日午前4時(日本時間同日午前10時)に再開予定だったが、直前の2日夜に一転して延期を発表した。再開のめどはたっていないという。
延期の理由は、タービンの電気回線の接続部分で見つかった「油漏れ」だ。ただ「通常、油漏れはタービンの運転に影響せず、現場で直せる」(独シーメンス・エナジー)という。かねて欧州諸国では、ロシアが様々な口実をつけて供給を拒み「エネルギーを外交の武器として利用する」との見方が出ていたが、懸念が現実になった形だ。
ウクライナ侵攻を巡り、ロシアは欧米から厳しい対ロ制裁を科せられている。ガスプロムは6月中旬以降、ノルドストリームでのガス供給を段階的に減らしてきたが、カナダで修理中だったシーメンス製タービンが制裁対象になったことが理由だと主張した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は8月31日、記者団に「(供給停止は)自分たちで科した対ロ制裁のためだ」と批判した。
ロシアが欧州への揺さぶりを強めたのは、G7の財務相が合意したロシア産石油の輸入価格に上限を設ける措置への反発もあるとみられる。12月5日から上限を超える石油の海上輸送に保険会社が保険サービスを提供することを禁じる内容で、ロシアにとっては経済と戦費を支える石油輸出が抑えられかねない。
欧州ではロシア産石油だけでなく天然ガスの価格にも上限を設ける案が浮上している。ペスコフ氏は2日、G7財務相の合意を前に「米企業が豊かになり、欧州の納税者がますます貧しくなる」と批判した。
ノワク副首相(エネルギー担当)は1日、主な輸出先の中国やインドなどは価格上限案に同意しないと主張した。ノワク氏は7月、価格上限が生産コストを下回る場合は輸出を停止する考えを示していた。
欧州ではガス供給や価格高騰への懸念が一段と強まりそうだ。欧州各国はガスの備蓄を急いできたが、ガス供給量がゼロに落ち込めば貯蔵の積み上げが鈍り、需要が高まる冬を迎える。市場ではユーロ圏のインフレ率が今秋に10%程度に達するとの予測も出ている。
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