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エチオピア北部戦闘半年 人道危機に懸念、経済成長陰る

ティグレ州から隣国スーダンに逃れてきた難民(3月、スーダン東部)=AP

【カイロ=久門武史】エチオピア政府と北部ティグレ州の支配勢力が半年前に始めた戦闘で、虐殺や性暴力、飢餓などの人道危機への懸念が強まっている。アビー首相が「作戦完了」を宣言した後も収束のメドは立たず、アフリカ随一の成長率を誇った経済に影を落とす。

「隠れた敵を掃討するのは難しい」。アビー氏が4月に漏らしたとおり、少数民族ティグレを支配していた勢力との戦いは終わりが見えない。昨年11月4日、軍に同州の与党ティグレ人民解放戦線(TPLF)への攻撃を命じ、3週間あまりで州都制圧と作戦完了を表明したが、TPLF側は市民に紛れてゲリラ戦を続けている。

こうしたなか民間人への残虐行為の報告が相次ぐ。米CNNは、小銃を持つ軍服姿の男らが丸腰の男性たちを崖に立たせて銃口を向ける動画を報道した。遺体を谷底に落とす様子も伝え、エチオピア軍兵士による処刑だとした。政府は動画を「(虐殺の)証拠とは扱えない」とした。アビー政権の友好国、隣国エリトリアの軍が多数のティグレ住民を殺害したとの告発もある。

国連によると国内避難民は100万人を超え、450万人が食料支援を必要としている。米世界平和財団は「数カ月で大規模な飢餓に至る」と4月に警鐘を鳴らした。

国際社会は厳しい視線を注ぐ。欧州連合(EU)は1月、人権支援機関がティグレ州に入れるようになるまでエチオピアへの8800万ユーロ(約120億円)の支援を凍結すると表明した。主要7カ国(G7)外相は4月、同州での人権侵害を懸念しエリトリア軍の撤退を求める声明を出した。

長引く混乱はエチオピア経済に重荷となる。インフレ率は20%に達し、通貨は下落基調だ。2月には米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングがエチオピアの長期信用格付けを引き下げ、「新たな武力衝突は民族対立に拍車をかける」と警告した。

破壊されたインフラの再建には国内総生産(GDP)の1%に当たる10億㌦(約1090億円)かかると政府はみる。エチオピアは2000年代半ばからアフリカ随一の10%前後の経済成長を続けたが、21年は2%成長にとどまると国際通貨基金(IMF)は予測する。新型コロナウイルス対策も財政を圧迫しており、20カ国・地域(G20)に債務返済の猶予を求めた。

ティグレ州の戦いは、約80もの民族を抱えるエチオピアを束ねる難しさを浮き彫りにした。アビー氏は19年、エリトリアとの国境紛争を終結させたとしてノーベル平和賞を受賞した。国際社会の仲介には「内政問題」としてはねつける姿勢を崩していない。

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