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独与党、ワクチン接種遅れで失速 迫る緑の党、政権交代に現実味

新型コロナワクチンの接種の遅れなどの失点が支持率低下を招いている=ロイター

【ベルリン=石川潤】ドイツの連邦議会選挙(総選挙)が半年後に迫るなか、メルケル首相の与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率が急落している。新型コロナウイルスの感染が再び広がるなかでワクチンの市民への接種が遅れたことが響いており、メルケル首相への支持も落ち込んでいる。支持率2位の環境政党、緑の党との差は急速に縮まっており、総選挙後の政権交代シナリオも現実味を帯びてきた。

「私たちの行動によって、感染者の急増に再びブレーキを掛けることができる」。メルケル首相は1日、ビデオメッセージで復活祭の休暇中の移動などの自粛を訴えた。英国型の変異ウイルスによる感染の第3波に直面し、医療システムの負担増への懸念が高まってきたためだ。

だが、メルケル氏のメッセージは多くの有権者にはむなしく響く。公共放送ARDが1日発表した世論調査によると、メルケル政権の仕事ぶりに満足しているという回答は35%にとどまった。2020年4月の63%から大きく落ち込んでいる。メルケル氏の与党CDU・CSUの支持率は1年前の40%近くから、最新の1日時点で27%にまで低下した。2位の緑の党とはわずか5ポイントの差だ。

支持率の急落の主因は、市民へのワクチン接種の遅れだ。英オクスフォード大学の研究者らが運営するアワー・ワールド・イン・データによると、ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合(3月30日時点)は11%で、英国(45%)、米国(28%)を大きく下回る。

ドイツ国内では、メルケル政権がEUの欧州委員会にワクチン調達を任せた結果、十分な供給が得られない結果を招いたことへの批判の声が広がっている。米製薬大手ファイザーと共にワクチンを開発したビオンテックはドイツの企業だけに、ドイツへの供給が滞る現状への市民の不満は根強い。

感染拡大の抑え込みに向けた州政府への指導力にも疑問符がついている。ドイツ政府は3月3日、感染者が増えれば元に戻すという約束でロックダウン(都市封鎖)の段階的な緩和に踏み切った。ところが、感染の第3波が来ても一部の州がロックダウンの再強化をためらい、それがさらに感染を広げるという事態を招いた。

3月23日には復活祭期間中のロックダウン強化を決めたが、準備不足で翌日に撤回するという失態を演じ、統治能力の低下を印象づけた。マスク取引で与党議員が利益を得ていたスキャンダルも追い打ちをかけた。

経済協力開発機構(OECD)の予測によると、ドイツの2021年の実質成長率は3.0%にとどまる。200兆円規模の経済対策を繰り出した米国の6.5%を大きく下回る見通しだ。ロックダウンが長引くなか、企業や自営業者らへの補償が不十分という不満もある。

これまで9月26日の総選挙後の新政権はCDU・CSUと緑の党の連立でほぼ決まりとみられてきた。ところがCDU・CSUの支持率急落で、緑の党がドイツ社会民主党(SPD)などと組んで政権を奪う可能性も出てきた。ドイツで初めて緑の党出身の首相が誕生する展開もあり得る。

1月に就任したばかりのラシェットCDU党首は早くも正念場に(3月29日)=AP

今後はCDU・CSUが新しい首相候補の選出によって巻き返せるかどうかが焦点となる。同党は秋に引退するメルケル氏に代わって「選挙の顔」となる後任首相の候補を5月までに決める。

有力なのは1月にCDU党首に選出されたラシェット氏と、姉妹政党であるCSUのゼーダー党首だ。議員数で勝るCDUのラシェット氏が首相候補になるのが順当だが、西部ノルトライン・ウェストファーレン州首相のラシェット氏は、ロックダウン緩和で感染を拡大させたと批判されている。

ARDの調査によると、CDU・CSU支持者のうち、ラシェット氏が「よい首相候補」になるとの回答は約3割にとどまる。厳格な感染対策を唱える南部バイエルン州首相のゼーダー氏との人気の差は大きい。

ラシェット氏はメルケル氏と同じ中道派のリーダーとして党首に就いたが、感染対策ではゼーダー氏がメルケル氏に近い。独メディアによると「ラシェット氏は首相にならず、メルケル氏の最後の犠牲者になる」との声も党内から漏れ始めた。

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