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米独禁当局、医療機器イルミナの買収阻止へ 「革新が停滞」

米カリフォルニア州にあるイルミナのオフィス=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則】米連邦取引委員会(FTC)は30日、米医療機器大手イルミナによる米がん診断技術会社グレイル買収計画を巡り、差し止めを求める訴訟を起こした。買収によって競争が阻害され、技術革新が停滞すると主張した。競合しない企業同士の統合について、米当局が「もの言い」をつけるのは珍しい。バイデン米政権の競争政策を映す動きとして注目を集める。

反トラスト法(独占禁止法)を管轄するFTCは米首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。イルミナは30日の声明で「FTCによる買収差し止めの動きは、長年の反トラスト法執行実務からかけ離れている」と主張、買収計画の遂行に向けて裁判で争う姿勢を示した。30日の米株式市場ではFTCの発表を受けて、イルミナ株は前日比8%安まで売られる場面があった。

米イルミナはシーケンサー(遺伝子配列解析装置)で世界最大規模のシェアを誇る。米グレイルは早期がんの検出技術を開発する新興企業で、2016年にイルミナから分離・独立した。アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏など有力者が出資していることでも知られる。20年9月、イルミナは同社を71億ドル(約7800億円)で買収すると発表。再び傘下に収める計画だった。

米当局は類似の商品・サービスを手掛ける企業の合併(水平統合)に介入するケースが多い。大企業による寡占化で、価格上昇など消費者が不利益を被りかねないからだ。一方、グレイルはイルミナから解析装置を購入する関係にあり、競合はしていない。「垂直統合」と呼ばれるM&A(合併・買収)だ。当局が垂直統合の阻止に動く例はあまりない。

FTCは、今回の買収が早期がん検出サービスの技術革新を停滞させると主張する。がん検出技術を開発する企業は、遺伝子解析装置の購入先として最大手イルミナ以外の選択肢が乏しいという。イルミナがグレイルのライバル会社に対して、装置を高く売りつけ、研究開発を阻害する可能性があると指摘した。

FTCは現在、民主党系2人、共和党系2人の委員で構成される。イルミナによるグレイル買収阻止は全会一致で決めた。民主党系のロヒト・チョプラ委員はツイッターに「ヘルスケア業界の垂直統合は競争を阻害し、新たな発見の芽を潰す。患者の費用負担増にもつながる」と書き込んだ。

バイデン政権と与党・民主党は競争政策の見直しを進めている。クロブシャー上院議員は2月、反トラスト法を抜本的に改正する法案を提出した。競争を阻害しかねない合併に対し、より高いハードルを設けるほか、政府の反トラスト法執行要員を増やす狙いがある。バイデン大統領はFTCの新委員に、米コロンビア大のリナ・カーン准教授を指名した。カーン氏はハイテク企業の規制強化を訴える論客として知られる。

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