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バイデン氏「永遠の戦争を終わらせる」 演説詳報

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バイデン米大統領は31日午後、アフガニスタンからの米軍の撤収完了についてホワイトハウスで演説し「この永遠の戦争を長引かせるつもりはなかった」と述べた。大統領の発言は以下の通り。

昨夜カブールにおいて、我々は米国史上最も長い20年におよぶアフガニスタン戦争を終わらせた。史上最大の空路での退避を完了させ、12万人以上がアフガニスタンから安全な場所に避難した。この数は、大半の専門家が可能だと予測した2倍以上にあたる。このようなことを実施した国はほかになく、その能力と意思があるのは米国だけであり、我々はそれをやってのけた。

「兵士ら、人道のために命をかけた」

この任務が大きな成功を収めることができたのは、米軍と外交官、情報機関のスタッフの卓越した技能、勇敢さ、献身のおかげだ。数週間にわたって、彼らは米国人、我々を助けてくれたアフガニスタンの人々、同盟国や友好国の国民を飛行機に乗せ、アフガニスタンから退避させるために命を危険にさらした。

彼らは、国を離れようとして押し合う群衆に向き合い、イスラム主義組織タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力のテロリストが群衆の中に潜んでいることを知りながら任務を果たしてくれた。そのような状況で米軍の兵士、外交官、情報機関のスタッフは、自分のキャリアのためではなく他人に尽くすために、戦うためではなく人道のための任務に命をかけ、役割を果たした。

任務の遂行において20人が負傷し、13人の英雄が命を失った。私はドーバー空軍基地でひつぎの帰還を見守った。我々は彼らとその家族に返しきれないほどの恩義がある。我々は決して忘れてはならない。

私は4月にこの戦争の終結を決意し、米軍の撤収期限を8月31日とした。20年にわたって我々が訓練し、装備を備えた30万人以上のアフガニスタン国軍が撤収後もしばらく持ちこたえられると想定したが、それは正しくなかった。私は国家安全保障チームに、あらゆる不測の事態に備えるよう指示した。

米国市民や大使館の職員、同盟国や友好国の人々、そして我々と共に働き、20年にわたって共に戦ったアフガニスタン人を31日までに安全に退避させるため、空港の安全確保に米兵6千人のカブール派遣を承認した。任務は厳しい重圧と攻撃の下で遂行するよう計画され、実行された。

3月以降、我々はアフガニスタンにいる米国人に19回にわたって連絡をとり、繰り返し警告し、退避の支援を申し出た。当初は残留を考えていたおよそ5千人の米国民が退避を望んでいることが分かった。

「100~200人の米国人、アフガンに残る」

我々の作戦で5500人以上の米国民を退避させ、数千人の他国の市民や外交官を退避させた。米大使館で雇用された現地スタッフとその家族、合計約2500人を退避させた。通訳など米国を助けた数千人のアフガニスタン人も退避させた。現在、退避する意思がいくらかある100人から200人の米国人がアフガニスタンに残っているとみられる。

アフガニスタンに残る多くの米国人は二重国籍者で、長年アフガニスタンに住み、家族のルーツもあるためとどまることを決めた。退避を希望した米国人の98%は退避を終え、残る米国人にも退避の期限はない。希望すれば退避させることを約束する。ブリンケン国務長官は、アフガニスタンに残る米国人やアフガニスタン人の協力者、外国人が安全に退避できるよう、外交努力を続けている。

実際、昨日の国連安全保障理事会は、国際社会のタリバンへのメッセージとして、渡航や出国の自由を保障するよう求める決議を採択した。これには希望者が出国し、アフガニスタンの人々に人道的支援を届けるための空路や陸路の再開に向けた取り組みも含まれている。

タリバンは米国の協力者を含め、出国を希望する人の安全を確保するとテレビやラジオで約束している。彼らの言葉だけでなく、行動をみて判断する。はっきりさせておきたいのは、8月31日の撤収期限は作為的に決めたことではなく、米国人の命を救うために決めたことだ。(トランプ)前大統領は、私が就任してからわずか数カ月後の5月1日までに米軍を撤収させることでタリバンと合意していた。この合意には、タリバンがアフガニスタン政府と協力するという条件は含まれていなかった。

「撤収するか、エスカレートするかの選択」

就任時、タリバンは2001年以降で最も強い軍事的立場にあり、国の半分近くについて支配するか争っていた。前政権は、米国が5月1日の撤収期限を守れば、米国に攻撃しないことでタリバンと合意していた。残留すれば全てが白紙に戻る。

そのため、我々に残された道は、前政権が結んだ合意した通りに従来の撤収期限を守るか、撤収しないと言ってさらに数万人の兵士を投入し、戦争に突入するかだった。撤収するか、エスカレートさせるかの選択だったのだ。私はこの永遠の戦争を延長させるつもりも、永遠の撤収を続けるつもりもなかった。

カブール空港における退避作戦を終了する決定は、軍事アドバイザー、国務長官、国防長官、現場指揮官などの全会一致によるものだ。彼らの提案によると、残る米国人やその他の人々の出国を確保するために最も安全な方法は、カブールで危険な状態にある6000人の米軍を残すことではなく、非軍事的な手段で出国させることだった。

我々はタリバンが勢力を握ってからも24時間体制でカブールでの救出支援をおこなった。我々は24時間体制ですべての米国民が退避できるよう支援した。国務省は人々に接触し、ときには空港の中に米国人を歩いて連れていくということもした。5500人以上の米国人が空路で退避した。

アフガニスタン人については10万人もの人を空路で退避させた。歴史的に我々ほど米国以外の人々を国外に退避させた国はない。まだ任務は終わっておらず、危険な状態の国に人々を残すことはしない。

「私はこの決定に責任を負う」

私はすべての米国民に、米軍と外交官、情報機関のスタッフがカブールで慈悲の使命を遂行したことへの感謝の祈りをささげてもらいたい。何万人ものボランティアが連携して退避する人々を空港に導き、必要な支援を行った。

我々はまだ彼らの助けを必要とし続けており、会える日を楽しみにしている。そして、アフガニスタンの友人たちに歓迎の手を差し伸べてくれる米国を含む世界中の人々に感謝する。

私はこの決定に責任を負っている。「もっと早く大量退避を始めるべきだった」とか「もっと秩序だったやり方でできなかったのか」という人もいるが、失礼ながらも、それには同意できない。想像してほしい。6月か7月の戦いのさなかに数千の米軍を引き揚げ、12万人以上の人々を退避させようとすればどうなったか。政府の支配への信頼が失われ、空港に人々が押し寄せる事態が起きただろう。それはやはり非常に困難で危険な任務だっただろう。

結局のところ、複雑さ、困難さ、脅威に直面することなしに戦争の終わりから退避することはできないのだ。無期限でとどまり続けるべきだという意見もあるだろう。彼らは「これまでしてきたことを続ければいいじゃないか。なぜ変える必要があるのか」と問いかける。しかし事実として、すべてが変わってしまっていた。

「トランプ前大統領がタリバンと取引」

私の前任者がタリバンと取引した。私が就任したとき、5月1日の期限が近づき、タリバンの猛攻が迫っていた。我々は2つの選択肢から1つを選ぶしかなかった。前政権の取り決めに従い、人々が撤収できるように期間を延長するか、もしくは、さらに数千の軍を派遣し、戦争を拡大するか。

30年目のアフガニスタン戦争を求める人たちに、どこに重要な国益があるのかと問いたい。私の意見は、アフガニスタンが二度と米国本土への攻撃に使われることのないようにすることが唯一の国益だ。そもそも、なぜ我々がアフガニスタンに出向いたかを思い出してほしい。それは01年9月11日に、ウサマ・ビンラディン容疑者とアルカイダの攻撃を受けたからだ。彼らがアフガニスタンを拠点にしていたからだ。

我々は11年5月2日、10年前にウサマ・ビンラディン容疑者を倒し、アルカイダを破壊した。みなさんは自分に問うてほしい。9月11日の攻撃がアフガニスタンではなくイエメンからだったなら、たとえタリバンが支配していたとしてもアフガニスタンに戦争に行っただろうか。正直な答えは「いいえ」だと思う。米国の国土と同盟国への攻撃を防ぐこと以外に、アフガニスタンには重要な国益はなかったのだから。

それが今も真実だ。我々は10年前にアフガニスタンでなし遂げようとしたことを達成したのに、さらに10年とどまってしまった。もう戦争を終えるときだ。新しい時代が来ている。テロの脅威はアフガニスタンをはるかに超え、世界中に転移している。我々はソマリアでイスラム過激派のアルシャバーブに、シリアとアラビア半島でアルカイダ関連組織の脅威に直面している。ISは、シリアとイラクにカリフを創設しようと試み、アフリカの各国に支部を作っている。

大統領の根本的な義務は、01年の脅威に対して米国を守るのではなく、21年および将来の脅威に対して米国を守ることにあると考える。それが、アフガニスタンに関する私の決定を導いた原則だ。何千もの米軍を同国に派遣し、年間何十億ドルをも費やし続けることで、米国の安全が強まるとは思わない。

「中ロはアフガン情勢の泥沼化を望んでいる」

しかし、テロの脅威が続くことも理解している。それは有害で邪悪な性質のもので、ほかの国にも広がっている。我々の戦略も変わらなくてはならない。我々はアフガニスタンや他国での対テロ戦を継続する。そのために地上戦は必要ない。我々は「オーバー・ザ・ホライゾン」能力、つまり米兵を派遣せずにテロリストの標的を攻撃する能力を持っている。米兵の派遣はほとんど必要ない。

我々は先週、その能力を示した。IS系の「ISホラサン州」を遠隔攻撃した。彼らが米兵13人と多くの無辜(むこ)のアフガニスタン人を殺害した数日後だ。米国の安全を守る最善の道は、断固とした、容赦ない、狙いを絞った、正確な戦略だと強く信じている。

それが米国の国益だ。理解しなくてはならない重要なことがある。世界は変化している。中国と真剣な競争をしている。中国やロシアが何よりも望んでいるのは、米国がアフガニスタンでもう10年の泥沼にはまり込むことだ。我々は過ちから学ぶべきだ。第一に、明確で達成できる目標を持った任務を設定する。第2に、根本的な米国の国家安全保障の利益に焦点を当てる。

「他国を作り替えるための軍事作戦の時代終わった」

アフガニスタンに関するこの決断は、アフガニスタンだけに関するものではない。他国を作り替えるための大規模な軍事作戦の時代の終わりだ。テロリストを掃討しテロ攻撃を止めるアフガニスタンでの対テロの任務が、反体制勢力の制圧、国家構築、民主的で団結したアフガニスタンという、同国の歴史で何世紀も実現しなかった任務に変形した。

米国に危害を与えようとする者、米国や同盟国にテロ攻撃を仕掛けようとする者は、知るがいい。米国は決して休まない。許さない。忘れない。必ず掃討する。究極の代償を払わせる。

明言したい。我々は引き続きアフガニスタンを外交的に支援する。人道支援を続け、アフガニスタンの人々の基本的人権、特に女性や少女の権利のために声を上げる。私は人権が米国の外交の中心だと明言してきた。だが、それは終わりのない軍事行為によって行うものではなく、外交や経済政策、世界からの支援を求めて行うものだ。

米国人のみなさん、アフガニスタン戦争は終結した。

私はこの戦争を終結させるかどうか、いつ終わらせるかという問題に直面した4人目の大統領だ。私が大統領に立候補したとき米国人にこの戦争を終結させると約束をした。私はこの約束を守ったことを光栄に思う。いまは米国人に対して正直になる時が来た。

「次世代の子供を戦場に送ることを拒否する」

我々はもはや(戦争に)明確な目的を持っておらず、アフガニスタンに対する使命は答えがない。20年がたち、私はずっと前に終結すべきだった戦争のために、次の世代の息子や娘たちを戦場に送ることを拒否する。

我々は2兆ドル以上をアフガニスタンのために支出した。ブラウン大学の調査によれば、この20年間で、毎日3億ドルをアフガニスタンのために使ってきたことになる。そうだ、我々は20年間、毎日3億ドルを使ってきたのだ。

もし少なく見積もって1兆ドルだったとしても、毎日1億5000万ドルを20年間にわたって使ってきたことになる。この結果、我々は一体どのような機会を失ったのだろう。私は、もはや重要な国益ではなくなった戦争を続けることを拒否する。

80万人もの米国人がアフガニスタンに従軍し勇敢で立派な仕事をし、2万744人の軍人が傷つき、今週命を失った13人を含む2461人が死亡した。私はこの国土を見て回った。

私は次の10年間、さらにアフガニスタン戦争を続けることを拒否する。もう20年我々は時間を費やした。我々はあまりにも長い間戦争をし続けた。もしあなたが20歳であれば、この期間、平和というものを知らずに育ったことになる。

アフガニスタンで危険性が低い軍事努力を維持すべきだという意見を聞くと、米国全体の1%の人々に課した重責を多くの人が十分理解していないと思う。彼らは制服を着て、国の防衛のために命をかけてきたのだ。

たぶん私の死んだ息子のボーがイラクで従軍していたので、あるいは上院議員として、副大統領として、大統領としてこうした国をめぐり、多くの軍人やその家族と会ったからかもしれない。

多くの退役軍人と家族は地獄のような日々をおくっている。従軍のため何年も家族と会うことができず、誕生日、記念日を祝うこともない。祝日にもプレゼントはなく、家計的に苦労し、離婚に追い込まれ、手足を失い、脳を挫傷し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいる。

「リスクが低い戦争はない」

我々は多くの軍人が帰還したときの苦悶(くもん)を見ている。家族関係のひずみを見ている。生還者の悲しみを見てきた。すべては戦争の代償だ。彼らは一生ともにすることになるだろう。

悲惨でショッキングな統計がある。18人の退役軍人が、毎日自殺している。リスクが低い戦争も、コストのかからない戦争もないのだ。私はアフガニスタンにおける戦争を終わらせた。争いと痛み、犠牲を伴う20年の戦争を終わらせた。未来に目を向ける時がきた。未来、より安全な未来、より保証された未来、リンカーン大統領がかつて話したような「最後の全力」を尽くしてささげた人たちに敬意を表する未来だ。正しく、賢明で、米国にとって最善の判断であると信じている。

神のご加護を。ありがとう。

(米州総局=中山修志、芦塚智子、長沼亜紀、河内真帆、野村優子)

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アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、大統領府を掌握しました。米国は2001年の米同時テロをきっかけにいったんはタリバンを打倒しましたが、テロとの戦いは振り出しに戻りました。アフガニスタン情勢を巡る最新の記事をこちらでお読みいただけます。

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