ブラジル大統領選挙、ルラ元大統領が当選 左派に回帰
【サンパウロ=清水孝輔】ブラジルで30日に投開票された大統領選挙の決選投票で、左派のルラ元大統領(77)が当選した。選挙管理当局が発表した。ルラ氏は2023年1月1日に大統領に就任し、通算3期目を務める。任期は4年。低所得層への社会保障を重視する方針が国民の支持を集めた。
開票率100%で、ルラ氏の得票率は50.9%、現職の右派ボルソナロ大統領(67)は49.1%と大接戦だった。ルラ氏の後任だったルセフ元大統領が弾劾裁判で退いた16年8月以来の左派政権となる。
ルラ氏は30日朝、サンパウロ州サンベルナルドで自ら投票した後に「きょうはブラジル国民が望む国家のあり方と人々の生活を決める重要な日だ」と話した。
労働組合の指導者だったルラ氏は03年から2期8年大統領を務めた。任期中に社会保障を強化した実績から低所得層に支持されている。選挙戦では富裕層への課税強化、熱帯雨林アマゾン保護の重視を訴えてきた。外交面では新興国との連携を強化する意向を示している。
一方で19年に大統領に就任した元軍人のボルソナロ氏は、国営企業の民営化や減税といった経済政策には一定の評価がある。ただ、新型コロナウイルスを「ただの風邪」と表現したほか、女性や同性愛者に対する差別的な発言が批判を呼び、キリスト教福音派を含む保守層や富裕層以外には十分に支持を広げられなかった。再選を目指して立候補した現職が敗北するのは初めてだ。
米ジョンズ・ホプキンス大によると、ブラジルの新型コロナ感染者数は累計で約3480万人、死者数は累計で約69万人にのぼる。ルラ氏に投票した医師のカルラ・ドネガさん(33)は「ボルソナロ政権下ではコロナワクチンの普及に時間がかかり、多くの命が失われた。ルラ氏には貧困層でも病院に行けるようにしてほしい」と話す。
約1億5600万人の有権者が直接投票で選ぶブラジル大統領選には11人が立候補していた。2日の1回目の投開票では過半数を確保した候補者がなかったため、決選投票に進んでいた。1回目の得票率はルラ氏が約48%、ボルソナロ氏が約43%だった。決選投票で両者の差が縮まった格好だ。
ボルソナロ氏は苦戦が見込まれるという事前の世論調査を受け、選挙の投票システムに疑念を示してきた。30日夜時点で、ボルソナロ氏は敗北について反応していない。大きな混乱はおきていないが、一部のボルソナロ支持者による道路封鎖が報じられている。
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