ナスダック指数、1月上昇率22年ぶり 引き締め緩和期待

【ニューヨーク=大島有美子】1月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比368ドル(1.1%)高の3万4086ドルで取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)による早期の利上げ停止観測や景気のソフトランディング(軟着陸)期待で、ハイテク株などリスク資産が買われた。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表や米テック企業の決算発表を控え、市場では株高の持続を疑問視する声も上がる。
ハイテク株の多いナスダック総合株価指数は1月の月間ベースで11%上昇した。1月の月間でみると上昇率は2001年(12%)以来の大きさだ。ダウ平均は1月に3%、S&P500種株価指数は6%それぞれ上げた。
1月は22年の株安局面で下げが大きかった業種の上昇が目立った。S&P500の構成業種ではIT(情報技術)や金融でそれぞれ上昇率が9%、7%となった。なかでも半導体や関連部品は16%上昇した。個別銘柄でみるとメタが24%、電気自動車(EV)のテスラが41%それぞれ上げた。一方、業績が景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄は下落傾向で、ヘルスケアは2%下げた。
反転上昇の背景にあるのが景気のソフトランディング期待だ。ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ氏は、22年10〜12月期の米実質国内総生産(GDP)が前期比年率で2.9%増と堅調だったことやインフレの鈍化を受け、ソフトランディングの確率を6割と予測する。

欧州では高インフレや景気後退への懸念が和らぎ、中国は新型コロナウイルスの厳格な封じ込め政策「ゼロコロナ」を大幅に緩和した。これを受け、1月は欧州株や中国株も大きく上昇した。
景気への悲観が和らぎ、1月はリスク資産に幅広く買いが入った。代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインは1月29日に一時2万4000ドル近くまで上がり、22年12月末時点から4割超上昇した。グロース(成長)銘柄への集中投資で知られる上場投資信託(ETF)「アーク・イノベーション(ARKK)」は月間で28%と急上昇した。ただ水準は21年2月の最高値からはなお75%低い。
米国債市場でもFRBの利上げ打ち止めを見越し、金利は低下している。米長期金利の指標となる10年物国債の利回りは1月31日に3.5%台前半で推移し、22年12月末時点と比べ約0.3%下げた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ハフェル氏は31日、1月の米株高について「ヘッジファンドによるショートカバー(買い戻し)と、ロングポジション(買い持ち高)の追加によるテクニカルな要因が大きい」と指摘した。
市場関係者は今週に控える重要イベントで景気の先行きや相場への影響を見極めようとしている。2月1日にFRBのパウエル議長によるFOMC後の記者会見、3日には雇用統計が発表される。ヤルデニ・リサーチのヤルデニ氏は「単なる弱気相場下の上昇ではなく、新たな強気相場の始まりだ」と楽観視する。
一方で米JPモルガンのマルコ・コラノビッチ氏は30日、「景気後退のリスクが減ったというより、単に先送りされただけだ」と指摘した。「米国の内需は弱い軌道を描いており、景気後退リスクは高まっている」と警戒する。
慎重派が重視するのが米企業業績だ。米モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は30日、「投資家は株高を正当化するシナリオを模索しているが、好材料は既に織り込み済みだ」と相場上昇の持続性に疑問を呈した。同氏はS&P500構成銘柄について「コストの増加が売り上げの伸びを上回る企業が目立ってきた」と分析。企業の収益力の低下が相場の重荷になるとみる。2日に控える米アップルやアルファベットなど巨大テック企業の決算発表や経営陣の発言に対する注目が高まっている。