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米、対EU鉄鋼関税を一部免除 貿易摩擦「妥協案」で合意

(更新)

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権は30日、欧州連合(EU)から輸入する鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税について一部を免除すると表明した。EUは報復関税を取り下げる。トランプ前政権下で始まった米欧貿易摩擦をめぐり、双方が「妥協案」で合意して、当面は関係修復を優先させる。

レモンド米商務長官が同日、記者団に明らかにした。鉄鋼とアルミにそれぞれ25%、10%上乗せしている追加関税は維持するものの一定の輸入量への関税は免除する。関税割当と呼ばれる仕組みで、具体的な数量枠は今後発表する。

ロイター通信によると、鉄鋼ではEUからの輸入が年330万トンを超えた分から関税を課す。輸入制限を始める前の2017年の輸入量(英国を除く)は470万トン。関税上乗せ後の19年は390万トンまで減った。今回の免除はあくまで一部にとどまり、輸入制限自体は形を変えて残る。

EUは米国から輸入する二輪車やウイスキーなどにかけている報復関税を撤廃する。12月1日に予定していた報復関税の拡大も取りやめる。

トランプ前政権は「鉄鋼とアルミの輸入増が安全保障上の脅威だ」と主張し、18年3月から追加関税を順次課した。「通商拡大法232条」に基づき、EUのほか、日本や中国などを対象にした。EUは報復したため、米欧対立を象徴する懸案になっていた。

米国とEUはそれぞれ世界貿易機関(WTO)への提訴を取り下げて、貿易紛争を終わらせる。中国からEUを通じて米国に流れ込む「迂回輸出」を防ぐため、EUは監視を強める。米EUは、巨額の補助金を使う中国の過剰生産が問題の主因とみて共同で対処する。

今回の合意は、事態を打開するため互いが譲歩した妥協案だ。EUは関税撤廃を求めてきたが、米国は拒否してきた。バイデン大統領の支持基盤である労働組合や鉄鋼メーカーが、関税を続けるよう求めてきたからだ。

バイデン氏は31日、訪問先のローマでEU欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談し「米国の鉄鋼産業の競争力を確保し、国内で雇用をもたらす」と強調した。

米鉄鋼業界は合意を歓迎している。全米鉄鋼労働組合(USW)は今回の措置で結果的に無関税で輸入される鉄鋼の量が17年よりもさらに小さくなると指摘した。上乗せ関税が一部なくなっても輸入制限自体は続くことで「国内の生産者に確実性をもたらす」と評価した。

一方、鉄鋼やアルミを使う自動車メーカーなどの需要家は関税撤廃を期待してきた。完全な撤廃にはならなかったが、レモンド氏は「(関税の一部免除で)コスト上昇やサプライチェーン(供給網)の混乱が和らげられる」と強調した。二輪車などEUの報復関税の打撃を受けた業界には追い風となる。

鉄鋼・アルミ関税は日本にもかけられたが、日本は報復していない。米商務省は31日、日本とも協議すると発表した。バイデン政権は同盟国・地域との協調をうたっており、対日関税の問題も進展する可能性がある。

もっとも米国の保護主義的な姿勢は大きくは変わらない。トランプ前政権は19年5月、カナダとメキシコの鉄鋼とアルミに対する追加関税にかえて関税割当を導入し、貿易紛争を終わらせた。バイデン政権も今回、前政権と同じ仕組みをEUに採用した。

バイデン政権は気候変動対策で前政権より積極的だ。米国とEUは今回、鉄鋼やアルミの製造工程で発生する二酸化炭素(CO2)を減らすため、協力を深めることでも合意した。

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