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ドル余り加速 FRB吸収1兆ドルに(NY特急便)

米州総局 後藤達也

四半期末となった30日、米短期金融市場で新しい記録が生まれた。米連邦準備理事会(FRB)が金融機関から資金を吸収する「リバースレポ」が約1兆ドル(約110兆円)と過去最多を更新した。ドル余りは加速しており、金融市場ではFRBがテーパリング(資産購入の減額)を近く始めても、大きな動揺をもたらさないのではとの見方も出ている。

リバースレポはFRBが実施する金融調節の一つだ。銀行などがFRBから債券などの担保を受け取り、FRBに資金を貸す仕組みだ。期間は1営業日で、毎日実施されている。金融システム全体でみると、市中から短期資金が吸い上げられる形となる。

30日の利用額は9919億ドル。29日も8412億ドルと過去最多だったが、連日で記録を塗り替えた。6月平均でも6000億ドルを超えており、それだけドルの短期金融市場でおカネが余っていることになる。

FRBは大量の資産購入で資金を供給しているはずなのに、一方で短期資金を吸収している。一見、あべこべにもみえる対応の裏には、ババ抜きのようにドルを押しつけ合う民間金融機関の姿がある。

銀行は金融規制の縛りで、むやみに余剰資金を持ちづらくなっている。これまで有力な投資先だった短期国債の流通量も減った。結局、ほとんど金利がつかなくても余った資金が1兆ドルもFRBに向かっている。

FRBは16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でリバースレポの適用金利を0%から0.05%へ引き上げた。これにより市中の短期金利も上昇したが、大量の資金がFRBに還流する構図はむしろ強まっている。2020年以降の大規模な財政出動や金融緩和の結果、金融機関が受け入れられないほどのマネーが増えている形だ。

「もはやFRBがテーパリングを始めても波乱は起こらない」(銀行の資金運用部門)。市場ではこんな声も漏れ始めている。国債などの資産購入とリバースオペは性格が異なるものの、FRBによるマネーの供給、吸収という大枠では対になる。

FRBの資産購入額は月1200億ドル。これを時間をかけて減らしていくのがテーパリングだ。テーパリングが始まってもFRBの資産残高は減るのではなく、増加ペースが鈍るだけだ。すでに1兆ドル近くのおカネがあふれ出る状況下で、追加の資産購入が緩やかになってもドル余りの状況は揺らがない可能性が高い。

FRBは6月のFOMCで今後のテーパリングの進め方の議論に着手した。雇用の回復が続けば、8~9月にもテーパリングの具体的な道筋を示すとの見方が市場では多い。そのシナリオが織り込まれつつも、S&P500種株価指数は30日、連日で史上最高値を更新。リスク資産全般にも資金が向かう。

13年、FRBがテーパリングを始めようとしたとき株式市場は動揺した。だがFRBの総資産はいまや8兆1000億ドルと13年当時の2倍をゆうに上回る。テーパリングは強力なアクセルを徐々に弱めるもので、資産が減るわけではない。そうした抵抗力が株式市場にも次第についてきているようだ。

(ニューヨーク=後藤達也)

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