FRB副議長「金融の脆弱性に注意」 世界的な引き締めで

【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長は9月30日にニューヨーク市内で講演し、高インフレに対応した金融引き締めが世界的に進むなか「金融の脆弱性に注意を払っている」と語った。新興国を中心に金利上昇や通貨安による債務不安が高まるリスクを指摘した。
物価の先行きを巡っては、ウクライナ危機や中国の厳格な新型コロナウイルス対策などで生じている供給制約が「長期化したり一段と悪化したりするリスクがある」と指摘。「需要を抑える金融引き締めの効果が各部門に浸透し、インフレを抑制するまで時間がかかる」とも述べ、「しばらくは引き締め的な金融政策が必要だ」と語った。「時期尚早な(緩和方向への)転換は避ける」姿勢も改めて訴えた。
一方、米国だけでなく世界で金融引き締めが進む状況を踏まえ「国境を越えた政策の波及効果が金融の脆弱性にどのように作用するかを考慮することも重要だ」と語った。例えば急速な米利上げを背景に進んだドル高が米国の輸入物価を抑制する半面、他国では通貨安によるインフレ圧力が高まり追加的な引き締めを迫られる可能性があることに触れた。
「政府や企業の債務が積み上がっている国では金利上昇で債務の返済負担が増し、通貨安も重なることで債務の持続可能性に対する懸念が高まる」と警鐘を鳴らした。新興国では債券価格の下落や投資家の需要減退で資本流出の圧力が強まり、ドル建ての資産よりも債務が多い国は特に厳しい状況に追い込まれるとも指摘した。
FRBの政策の討議では、米国の動きが世界の金融システムに与える影響や、海外の動きが米経済見通しと金融システム面のリスクにどう影響するかも分析しているという。「各国の金融政策担当者と頻繁かつ透明性のあるコミュニケーションを取っている」とも語り、政策運営でリスクに広く目配りする姿勢を強調した。