FRB議長「量的緩和終了、前倒しを議論」 12月FOMCで
【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は30日の米上院委員会での議会証言で、「私の見解では資産購入を数カ月早く終了することを検討するのが適切だ」と表明した。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で開始を決めたばかりの量的緩和の縮小(テーパリング)の加速を「(12月半ばの)次回のFOMCで議論する」意向を示した。
FRBは11月にテーパリングに着手し、月1200億ドルだった国債などの資産購入額を月150億ドルずつ減らす方針を示していた。このペースだと2022年6月に購入額がゼロになる予定だったが、より早期に終える可能性が高まっている。市場では毎月の減額ペースを22年1月から月300億ドルに加速し、同3月までに資産購入を終える案などが浮かぶ。資産購入を早く終えることで過剰な景気刺激を止め、必要に応じて利上げに動ける余地を確保する狙いがある。

12月のFOMCは14~15日に開く。パウエル議長はそれまでに「インフレや失業に関するデータ、新型コロナウイルスの変異型『オミクロン型』の進展についても確認していく」と述べた。今週と来週発表になる11月分の雇用統計や消費者物価指数(CPI)の内容と、オミクロン型が米経済に与える影響を精査し、テーパリングの加速が適切かどうかを最終判断する構えだ。
パウエル議長は議会証言で、テーパリングの加速に前向きになった理由として「より持続的なインフレのリスクが高まっているのは明らかだ」と指摘した。「ここ数カ月で物価上昇はより広範囲に及んでいる」と述べた。「我々がインフレに関して見落としていたのは供給サイドの問題の予測の難しさだ」とも語り、物流の混乱などによる供給制約がインフレ持続につながるリスクに警戒感をにじませた。
FRBはこれまでインフレについて「transitory(一時的)」との表現をしてきたが、「この言葉を使わないようにする良い機会だ」とも述べた。物価高の一因である需給の不均衡が和らぎ、来年にかけて物価上昇率が政策目標の平均2%程度に落ち着くとの従来の見解も重ねて示しつつ、インフレが止まらないリスクにより重きを置いた。
失業率の低下など労働市場の改善が進んでいる点を評価しつつ、人々の感染再拡大への不安などを理由に労働参加率が高まってこない問題にも言及した。「パンデミック前のような素晴らしい労働市場に戻るには、より長い景気回復が必要になる」と指摘。その際にも「持続的な高インフレがリスクになる」と指摘し、インフレ抑制が景気や雇用の回復に重要との認識を示した。
議会証言では議員からFRBが公表する予定の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する報告書についても質問が出た。9月ごろとされていた公表時期が遅れている。パウエル議長は「今後数週間のうちに」公表する考えを示した。
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