/

テスラ株で駆けた「すご腕」運用者の未来図(NY特急便)

米州総局次長 田口良成

20年はテスラなど成長株への投資スタンスがファンドの運用成績を左右した(テスラのイーロン・マスクCEO)=ロイター

30日の米株式市場は盛り上がりを欠きながらも、ダウ工業株30種平均は過去最高値を更新した。アップルなど巨大IT(情報技術)が軒並み下げる中、気を吐いたのが4%高となったテスラ株だ。2020年を代表するグロース(成長)株として、同社株を多く組み入れるファンドの価格も押し上げた。そんな成長株投資の人気を横目に、年の瀬の市場参加者はある教科書に手を伸ばしている。

生き馬の目を抜く米資産運用業界。今年台頭したのが、アクティブ型の上場投資信託(ETF)を運用するARKインベストメント・マネジメントだ。旗艦ファンドの「イノベーションETF」の価格は年初来で2.5倍超に上昇。運用成績は全ファンドの中でトップを競う。

好調なパフォーマンスに比例するように資金流入も急増した。QUICK・ファクトセットによると、同ETFの運用資産総額は29日時点で約185億ドル(約1.9兆円)と年初の10倍になった。原動力は成長株への選別投資だ。なかでもテスラ株は全体の10%を占め、同社株の上昇がファンドをけん引した。

5年~10年先の世界を予想し、破壊的な技術革新で最も利益を上げられそうな企業に投資する。こうした企業は新型コロナウイルスの感染拡大によって成長が加速しており、コロナ前より高い投資評価が許容される。これが、ARKのキャシー・ウッド最高経営責任者(CEO)のスタンスだ。テスラ株については18年に、その後の急上昇を「予言」。メディアに頻繁に登場し、「ディスラプションの伝道師」といえる存在になった。

テスラ株の過熱感やARKの拡大ぶりを危ぶむ声もあるが、ウッド氏は21年以降も強気だ。

今後5年で電気自動車(EV)の世界販売は20倍になり、自動運転のネットワーク拡大で輸送コストは劇的に下がるとみる。ARKはテスラを単なるEVメーカーとはみておらず、ライドシェア事業への進出や自動運転技術の強化を促す。そこから集まる情報をベースに、プラットフォーマーとして収益性を高められると踏んでいるからだ。

直近の投資家向けリポートのタイトルは「変化の正しい側にとどまれ」。そうではない株式や債券投資は、割安なままの「バリュートラップ」に陥ると警告する。成長株で脚光を浴びたウッド氏からの、バリュー(割安)株投資に対する痛烈な批判だ。

巨大ITやテスラ株の上昇が目立った一方、割安株は今年も振るわなかった。11月以降は新型コロナのワクチン普及への期待から反転する場面もあったが、年間を通じてみれば成長株に見劣りする。

運用業界では今年、「バリューは死んだのか」が一大テーマになった。データを交えた論争にはAQRキャピタル・マネジメントやディメンショナル・ファンド・アドバイザーズなど、名だたるクオンツファンドも加わった。

論点は多岐にわたる。①そもそも成長株と割安株で収益力の格差が広がっている②巨大ITなどで膨らんでいる無形資産への投資は費用に計上されるため、成長株の利益が過小評価されている③将来キャッシュフローの割引率となる金利の低下で、成長株に追い風が吹いた――。こうした仮説には反論が示され、いずれも決め手に欠ける印象だ。

今秋にはコロンビア大の教授陣らが「Value Investing」の第二版を刊行した。初版はITバブルの崩壊を受けた2001年で、運用業界で熟読された。将来への過剰な期待がはげ落ち、より現実的な企業評価へのニーズが高まったためだ。

第二版は時代の変化に対応して「成長」の分析に紙幅を割いた。同大はウォーレン・バフェット氏らを輩出したバリュー株投資の殿堂。成長株投資の熱狂に包まれたこのタイミングでの出版に意地をみてとる投資家もいる。「売り買いの正しい側にとどまれ」。こう記す本の売れ行きは、21年の相場動向や市場参加者の心理を映す指標となりそうだ。(ニューヨーク=田口良成)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン