NY株、14年ぶり下落率 利上げで時価総額1110兆円減

【ニューヨーク=竹内弘文】低金利環境に終わりを告げた2022年は米国株式市場にとって波乱の一年となった。主要な株価指数は14年ぶりの下落率を記録した。主要500銘柄の時価総額は年間で約8兆5100億ドル(約1110兆円)目減りした。急ピッチの金融引き締めに伴い、巨大IT(情報技術)企業などの株価が急落した。
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22年最後の取引となった30日にダウ工業株30種平均は3万3147ドルで引け、年間で3191ドル(9%)安となった。多くの機関投資家がベンチマークとするS&P500種株価指数は19%下落。ナスダック総合株価指数も33%安で、いずれも年間の下落率は金融危機のあった08年以来の大きさだ。
QUICK・ファクトセットによると29日時点でS&P500構成銘柄の時価総額は34兆2500億ドルと21年末から8兆5100億ドル減った。21年通年での増加額(8兆8500億ドル)をほぼ帳消しした。
IT銘柄が時価総額の減少を主導した。アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル親会社)、アマゾン・ドット・コム、メタ(旧フェイスブック)の5社だけで時価総額の減少額は3兆6600億ドルにのぼった。

将来の利益見込みが株価を左右しやすい低金利下で、頭文字をとって「GAFAM」とも呼ばれた5社は株式市場における存在感を高めてきた。ピーク時にはS&P500採用銘柄全体の時価総額の25%程度を占めた。しかし同比率は足元で18%程度にまで低下している。金融危機以来、長引いた低金利環境が終了したためだ。
新型コロナウイルス禍からの経済再開や供給網の目詰まりで進んだインフレを抑え込むため、米連邦準備理事会(FRB)は3月にゼロ金利政策を解除した。12月までに政策金利を計4.25%引き上げた。政策金利の先高観を背景に長期金利(10年債利回り)も3.87%と21年末に比べて約1.4%上昇(債券価格は下落)した。
11~12月にかけては景気後退入りへの懸念も株価の重荷となった。物価上昇率はピークを越えた一方、米サプライマネジメント協会(ISM)の米製造業景況感指数が好不況の節目である50を割り込んだ。「市場の関心はインフレや利上げから、利益成長(の鈍化)や景気後退へと移ってきた」。米モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は解説する。
S&P500の業種別指数では個人消費の弱含みを背景に「一般消費財・サービス」が年間で4割安となり、電気通信やITなどと並んで下げがきつかった。原油価格上昇が追い風となった「エネルギー」を除く、すべての業種別指数が下落した。
23年も不安定な相場が続きそうだ。米大手投資銀行の株式ストラテジストによる23年末時点のS&P500予想は3900~4200で分布し、22年末(3839)並み、またはやや高めでの着地を見込む向きが多い。
ただ、米JPモルガンのマルコ・コラノビッチ氏は、FRBの金融引き締めが景気を冷やしすぎて23年前半は相場が下値を探る展開を予想する。相場が切り返すのは「FRBが利下げへの転換を示唆し始めてからだ」とみていた。