NATO事務総長、対ロシア「欧州で大戦以来の安保危機」
中国の深刻な挑戦認識

【マドリード=坂口幸裕】北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は29日の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻について「第2次世界大戦以来、欧州で最大の安全保障上の危機をつくり出している」と述べた。一方、威圧的な行動を強める中国については深刻な挑戦を認識しなければならないと表明した。
NATOは29日に採択した今後10年の指針となる新たな「戦略概念」はこれまで「戦略的パートナーシップ」と表現していたロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義した。ウクライナ侵攻を受け、NATOと対立を深める現状を反映した。
ストルテンベルグ氏は「新たな安全保障の現実に対応するため、防衛と抑止の根本的な転換を決めた」と強調した。新しい戦略概念では初めて中国に言及。中国が「体制上の挑戦」を突きつけていると明記した。採択は2010年以来、およそ12年ぶりになる。
ストルテンベルグ氏は「中国は我々の敵ではない」と話した。一方「中国の深刻な挑戦について明確に認識し、ルールに基づく国際秩序を維持するためパートナーと立ち向かい続けなければならない」と強調した。
ストルテンベルグ氏は「中国の自己主張の強まりと威圧的な政策は同盟国・有志国の安全保障に影響を及ぼす」と明言。「核兵器を含む軍事力を大幅に増強し、近隣諸国や台湾を脅している」と批判した。
中国が覇権主義的な動きを強めるインド太平洋地域で「パートナーとの協力を強化する」と述べた。サイバー防衛や先端技術、海洋安全保障などグローバルな課題で連携する意向を示した。
民主主義国家と敵対する中国とロシアについて「戦略的パートナーシップを深化させている」と分析した。新しい戦略概念でも「ルールに基づく国際秩序を破壊する両国の試みは我々の価値と利益に逆行する」と断じた。
NATOは29日の首脳会議で、北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟を認める方針で合意した。ストルテンベルグ氏は「NATOの門戸が開かれていることを示すものだ」と指摘。「すべての国が自らの道を選択する主権的権利を尊重している」と訴えた。
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