米物言う株主サード・ポイント、インテルに事業見直し要求
【ニューヨーク=宮本岳則】米有力アクティビスト(物言う株主)のサード・ポイントが米半導体大手インテルに対し、製造部門を自前で抱える事業モデルについて、見直しを要求していることが29日明らかになった。次の株主総会に向けて両者の攻防が激しくなる可能性がある。
サード・ポイントは29日、同ファンド創業者のダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)がインテルのオマー・イシュラック会長に宛てた手紙を公開した。インテル株の保有額を明らかにしていないが、ロイター通信によると10億ドル(約1030億円)近いという。インテルも同日、文書を受け取ったことを明らかにした上で、「サード・ポイントのアイデアについて、彼らと対話するのを楽しみにしている」と表明した。

サード・ポイントのローブ氏はレターの中でインテルの競争力低下と株価低迷について批判した。半導体製造技術の開発では台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子に後れをとっていると指摘。パソコン向けCPU(中央演算処理装置)ではアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)にシェアを奪われ、人工知能(AI)計算用の半導体ではエヌビディアが圧倒的な存在感を誇る。
ローブ氏はインテルに対し、事業や戦略の見直しに向けて投資アドバイザーを雇うように進言した。具体的には設計・開発から製造までを手掛ける垂直統合的な事業モデルの見直しを検討課題に挙げたほか、過去の買収でうまくいかなかった案件について、売却の可能性を模索するように要求した。
インテル経営陣も半導体の性能を左右する「微細化」技術で後れを取っていることは認めている。同社のボブ・スワンCEOは7月の決算会見で「緊急対策の範囲内で(外部への)生産委託を検討する」と述べ、自社製造にこだわらない姿勢を見せた。株式市場では同社の改革スピードの遅さに不満もくすぶる。
サード・ポイントはインテル経営陣に圧力をかけることで、構造改革を前に進めたい考えのようだ。ローブ氏は手紙の中で次の株主総会で取締役候補を出す可能性を示唆した。インテルがサード・ポイントの要求を受け入れなかったり、株価の低迷が続いたりした場合、株主総会で委任状争奪戦に発展する可能性もある。
サード・ポイントは米国を代表するアクティビストで、約150億ドルを運用する。ソニーへの投資では19年、画像センサーなど半導体事業の分離・独立と、上場子会社のソニーフィナンシャルホールディングスの株式売却を求めていた。
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