コロナで早期退職、ベビーブーマー300万人 米連銀試算

【ニューヨーク=斉藤雄太】新型コロナウイルスの影響で早期退職した米国のベビーブーマー世代(1946~64年生まれ)は300万人を超える――。米セントルイス連銀のエコノミストがこんな試算を公表した。コロナ後に減少した労働力人口の半分以上の規模になる。感染リスクへの不安に加え、コロナ下で生じた資産価格の急上昇が労働市場からの早期退出につながった可能性を指摘した。
セントルイス連銀のシニアエコノミスト、ミゲル・ファリア・カストロ氏が10月中旬に分析結果を公表した。同氏はベビーブーマーの大量退職が始まった2008年以降の動きをもとにベビーブーマーの退職割合を推計。実際の退職者の割合と比較した。コロナ後は実際の退職が推計を上回り、8月時点で両者の差は1%近くに達した。人数ベースで計算すると、コロナを理由にした「超過退職者」は300万人を超えるという。
米国の労働参加率は21年4~6月期で61.6%とコロナ前の19年10~12月期を1.6ポイント下回り、労働力人口は約525万人減った。ここには子供や家族の世話で仕事を辞めた人なども含むが、過半はベビーブーマーの早期退職が占める計算になる。
カストロ氏は要因として、高齢者はコロナの感染リスクが相対的に高く、仕事を辞める人が増えた点を指摘した。コロナ後は世界的な金融緩和などで株式や住宅などの資産価格が上昇し、保有する資産価値の拡大が早期退職を促したとの見方も示した。
米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和策を継続する目安の一つに「最大雇用の達成」を掲げ、労働参加率の改善ペースも焦点になる。早期退職したベビーブーマーが労働市場に復帰せず退出したままなら、労働参加率のコロナ前の回復は難しくなる。ベビーブーマーの動向をどう読むかが金融政策判断でも重みを増しそうだ。