アルゼンチンとIMF、債務再編で基本合意

【サンパウロ=宮本英威】アルゼンチン政府と国際通貨基金(IMF)は28日、450億ドル(5兆1800億円)規模の債務再編で基本合意した。返済時期を遅らせるもようだ。今後は歳出抑制により段階的に財政赤字を減らす計画で、2025年に財政均衡を目指していく。
両者は引き続き交渉し、アルゼンチン議会とIMF理事会での承認を目指す。IMFは同日、「アルゼンチン当局と財政再建への道筋で合意した」との声明を公表した。インフラや科学技術分野への投資は認める一方で、「エネルギー分野の補助金を徐々に減らすことは不可欠であると一致した」と指摘した。
フェルナンデス大統領は同日朝、「我々は支払うことができない負債を抱えていた。今回の妥当な合意で、成長を通じて我々の義務を果たすことができる」と強調した。今回の合意が「公共サービスや社会福祉には影響を与えない」とも述べた。
グスマン経済相は財政赤字について、22年は国内総生産(GDP)比で2.5%、23年は1.9%、24年は0.9%を目指す方針を表明した。
一方、IMFのナンバー2にあたるギータ・ゴピナート筆頭副専務理事はツイッターへの投稿で、25年までの財政均衡で合意したと明らかにした。これまでアルゼンチン政府は27年の財政均衡を訴えており、目標を前倒しすることになった。
ブラジル大手のブラデスコ銀行によると、アルゼンチンの純外貨準備残高は30億ドル程度に下がっている。22年には190億ドルの返済を控えており、IMFとの交渉で債務を再編しない場合には支払いは難しいとみられていた。
経済紙アンビト・フィナンシエロによると、28日は債務の支払日にあたっており、アルゼンチン政府はIMFに7億3100万ドルの支払いを完了した。
アルゼンチンは中道右派のマクリ前政権下の18年、IMFから570億ドルの融資枠を得た。通貨ペソの下落で混乱した経済を立て直すためだった。
19年12月に就任した反米左派のフェルナンデス政権は、マクリ前政権とIMFの合意を強く批判してきた。新型コロナウイルスの感染拡大によって経済が低迷したため、20年8月からは対話路線に転じていたが、交渉は難航していた。
アルゼンチンの経済状況は厳しい。21年の消費者物価上昇率は50.9%と、世界で有数の高い水準だ。22年も同程度のインフレが見込まれている。実質経済成長率は2%程度にとどまる見通しだ。