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FRB議長「物価上昇率、数カ月は高水準」 会見要旨

(更新)
FRBのパウエル議長(28日、オンライン)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。個人消費の拡大や世界的な半導体不足による供給制約などにより「今後数カ月は高い物価上昇率が続く」との認識を示した。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が、経済が回復をなし遂げるまで強く支えることを保証するだろう。ワクチン接種の進捗と前例のない財政出動も強く回復を支えている。

経済活動の指標や雇用指標は引き続き改善しており、2021年の実質国内総生産(GDP)はここ数十年で最も大きな増加率となりそうだ。急速な経済拡大は沈んでいた活動が再開していることを反映している。パンデミック(世界的大流行)の打撃を最も受けた分野も改善しているが、完全ではない。

家計による消費は経済再開を受けてとりわけ急速に増えている。住宅市場は強く、企業の設備投資は底堅いペースで拡大している。産業によっては、短期の供給制約が活動の足かせとなっている。特に世界的な半導体不足で生産を縮小せざるをえなくなった自動車業界で顕著だ。

雇用情勢は改善しており、6月は娯楽やホテル産業で雇用者数が増加したが、まだ道半ばだ。子供のケアの必要、ウイルスへの恐れ、失業給付が重荷となっているようだ。今後数カ月でこうした要因は薄れ、雇用増につながるだろう。

物価上昇は著しく、落ち着くまで数カ月は高い上昇率が続くだろう。経済再開で消費が持ち直すに従い、分野によっては予想より大きい短期的な供給制約が物価上昇圧力となっている。一時的な供給制約が和らげば、物価上昇率は我々の長期的な目標(2%)に向けて下がっていくだろう。

経済再開の過程は前例のないものだ。再開が進むにつれ、労働者確保の難しさといった制約は引き続き供給を左右しうる。よって物価上昇率は我々の予測を上回る値が長く続く可能性がある。金融政策の枠組みでは物価の安定と最大雇用の実現に向けた我々の能力を高めるために、期待物価上昇率が固定されることが重要だ。もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。

パンデミックの経済への影響は減っているが、経済の先行きには引き続きリスクがある。ワクチン接種ペースが鈍化しており、インド型(デルタ型)が急速に広まっている地域もある。ワクチン接種の拡大は経済を通常に戻すのを支える。

物価上昇率が2%をずっと下回るようなら、我々はしばらくの間、2%を適度に超えるように目標を定めるだろう。雇用と物価目標が達成されるまで、我々は緩和姿勢を維持するつもりだ。金利で言えば、政策金利の誘導目標を現状の0~0.25%で維持するのが適切だ。雇用と物価目標でさらなる著しい進展がみられるまで、我々は米国債の購入を少なくとも月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで買い入れる施策を続ける。

資産購入は重要な施策だ。パンデミック初期に金融安定性と市場機能を保つよう支えた。我々は会合で、経済状況がかわったと認定したときに資産購入のペースや構成をどのように調整するかを検証した。FOMC参加者は経済が引き続き、我々が基準とする著しい進展に向かっているところだとした。今後の複数の会合で再び評価する。資産購入の変更は今後入ってくるデータに基づく。変更の前には前もって通知する。

パウエルFRB議長の一問一答は以下の通り。


――最大雇用と物価目標について、さらなる著しい進展は具体的な指標で表すとどうなるか。

「物価の安定という点では2%だが、完全雇用は単純に1つの数字では表せない。労働市場を広範囲にみるためだ。失業率も年齢によって異なるほか、労働参加率や賃金など様々なデータがある。これらを総合して完全雇用の状態かを判断する」

「さらなる著しい進展をなし遂げたと判断したら事前にその旨を周知するつもりだ。現時点では完全雇用で言えば達していない。物価上昇率は2%目標を数カ月間上回っている。目標に達したかという判断はFOMC参加者が決めることだ。ガイダンスは利上げに踏み切る際のもので、いまは利上げを議論するタイミングではない。その時期になれば2%を緩やかに上回る段階かどうかの議論をする」

「通常は物価上昇率が高水準の場合は雇用も高水準となる。現在の状況は一時的にねじれた状態になっているが、今後数年間に雇用は大きな改善を示し完全雇用を達成するとみている」

――量的緩和縮小(テーパリング)の開始について、事前に周知する過程はもう始まったと捉えて良いか。8月のジャクソンホール会議での発言への注目も高い。

「いまその過程にある。声明文や議事録を通じて明確に我々の意図を示し、できるだけ開かれた金融政策を実施するつもりだ。現時点ではまだ縮小するに足る『さらに著しい進展』には達していないとのみ言える」

「テーパリングの時期に関しては何の決定もしていない。必要に応じて時期やペース、構成について適切に情報を提供する。今回の会合は、これらについて深く掘り下げた初めての会合で、私が話せることは話した。我々は着実に前進しており、さらなる進展があるだろう。順調にいけば目標に到達できると期待している。ジャクソンホールについて何も言えることはない。スピーチを書いている最中だ」

「今回の会合では多数の参加者が、MBSとその購入縮小を話題にした。私は、国債とMBSの購入は金融情勢に同じように影響していると考えている。住宅価格への寄与という点では若干の違いがあるかもしれないが大きくはない。参加者の意見をみる限り、国債とMBS購入の縮小は同時に行うことになると思う。国債よりやや速いペースでMBS購入を縮小するという考えには、一部の参加者が支持をしていた。議論を続けることになる」

――過剰な物価上昇率が一時的と捉える根拠は。

「過剰な物価上昇を招いているのは、自動車、宿泊料金、航空料金などいくつかの項目だ。これらは長期的な物価上昇率もしくは米経済に重要な影響を与えることはない。例えば木材価格は高騰した後で下落した。我々が予測しているのは、このように価格が横ばいになるか下落することだ。いくらか時間はかかるだろうが、こうした現象が広がり始めれば我々の物価動向への基本的な理解が正しいことがわかる」

「物価上昇を引き起こしているのは供給側だ。経済再開に伴う需要急増に供給が追いつかないために起きていることだ。慌てる必要はまったくない。一過性の経済へのショックである可能性が高いが、我々は物価の安定に責任を負っており、リスクは真剣にとらえる必要がある」

「賃金は上昇しているが、多くは新規採用や低賃金のサービス産業に労働者が復帰する過程で起きている。それに問題はない。単位労働コストがあがり、(雇用する企業の)利幅に(縮小)圧力がかかり、広範囲に物価を押し上げる現象が起きれば問題だが、今のところ起きていない」

――変異ウイルスの感染拡大が経済回復に及ぼす影響をどう見るか。

「20年夏の感染拡大局面を振り返ると、米南部や西部の州で感染者数が多かったが、経済は好調だった。経済への影響は想定よりもずっと小さかった。新たに感染拡大の波が訪れる度、次第に景気への影響は小さくなる傾向がある。今は多くの米国人がワクチンを接種し、それぞれの生活を続けている。(コロナと)共存する方法を学んだのだ。ほとんどの業界が素早く対応した。住宅購入の手続きはバーチャル化し、(飲食など)他の業界ではテークアウトや非接触のやり取りに移行した」

「デルタ型の動向は注視する必要がある。ワクチン接種の拡大は明らかな効果があり、ロックダウン(都市封鎖)は起きないだろう。ただ学校やオフィス勤務の再開が数カ月遅れることは容易に想像できる。数カ月間だけ経済減速につながるような影響はあるかもしれない」

――雇用の需給ギャップをどう見ているか。

「失業者数に対する求人数の比率がこれほど高いのはまれだ。まず人々は元の仕事に戻るよりも、新しい仕事を探している。全米の企業から、人の確保が非常に厳しいとの話を聞く。人々が次の仕事を慎重に探しているからかもしれない。働きたいという意思はあるということだ。時間はかかるかもしれないが、米国人は希望する仕事に就いていくだろう。感染リスクの懸念や、失業給付なども要因だが弱まっていくはずで、今後は力強い雇用創出が期待できる」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

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