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飽和迫る米動画配信市場、みえた「天井」(NY特急便)

米州総局 清水石珠実

28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅続伸。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反発した。前日夕に米メタ(旧フェイスブック)が市場予想を上回る決算を発表したことをきっかけに、今週下げが目立っていたハイテク株に買い戻す動きが広がった。

28日、米CATV大手コムキャストの2022年1~3月期の決算発表が注目を集めた。19日に決算を発表した動画配信大手ネットフリックスの会員数が過去10年間で初のマイナスに転じ、ほかの動画配信サービスの動向へも関心が高まったためだ。コムキャストの動画配信サービス「ピーコック」の有料会員数は22年3月末時点で1300万人に達し、3カ月間で4割超の増加と好調だった。

コムキャストは傘下にメディア大手NBCユニバーサルを抱える。「ストリーミング」という新しい手法で業界にディスラプション(創造的破壊)を起こした新興のネットフリックスの背中を追う旧メディアの代表格だっただけに、今回の快進撃に鼻高々かと思いきや様相はやや異なる。

「こうした高成長を毎四半期ごとに実現できるとは思わない」。コムキャストのブライアン・ロバーツ最高経営責任者(CEO)は決算会見でこう淡々と語った。同社は米国で五輪放映権を持つ。2月は北京冬季五輪と米プロフットボールNFLの王者決定戦「スーパーボウル」の放映が重なった。ロバーツ氏は「コンテンツには波がある」とし、1~3月期の会員増は一時的なものだと投資家に説明した。

米国の動画配信サービスは、ネットフリックスとピーコック以外にも、HBOマックス、Hulu、ディズニー+(プラス)などが存在する。サービスの数は増え続けているが、市場にはすでに飽和感が強まっている。ロバーツ氏が今後の成長に慎重な姿勢をみせる背景だ。

英調査会社カンターによると、3月末時点で動画配信サービスを使っている米世帯の割合は86%と、21年末比でほぼ横ばいとなった。新型コロナウイルスによる「巣ごもり需要」を追い風に拡大を続けてきた米動画配信市場だが、普及率が9割に近づき、成長は一端止まったようにみえる。

また、1世帯が契約する動画配信サービス数も4.7、有料のサービスに絞ると3.7と、前年末から停滞した。いままでは「新しいサービスが始まったら、それも加える」という消費者が多かったが、こうした追加意欲には限界がある。カンターのニコール・サンガリ氏は、1世帯あたりのサービス契約数は「天井に達した」との見方を示す。

また、広告配信を手掛ける米トレードデスクの調査によると、昨年の調査で米消費者の過半が動画配信に振り分ける予算は月30ドル(約3900円)以下と回答したという。現在、ネットフリックスとHBOマックスの中心プランは月額約15ドルで、この2つを契約しただけで平均的な世帯の予算を使い果たしてしまう計算になる。今年に入って急速に進んだインフレの影響で、こうした娯楽向け予算はさらに縮むとみられる。すでに広告の入った無料や安価な配信サービスが人気を集め始めており、ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは広告付きプランの導入を検討していることを明らかにした。

チャンネルを変えるように、消費者が動画配信サービスを月ごろに乗り換える時代の到来は、ネットフリックスだけでなく、旧メディア側にとっても脅威だ。見たい番組がなかったら、消費者にすぐに解約されてしまうからだ。「天井」の見え始めた動画配信市場の競争は新しい局面に入った。

(ニューヨーク=清水石珠実)

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