米EU首脳、欧州向けガス調達へ協力 ロシア産停止に備え

【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は28日、エネルギー安全保障の協力に関する共同声明を発表した。欧州がロシアに依存する天然ガスが不足するのを避けるため、世界の生産国から調達を増やすよう共同で取り組むとの声明を発表した。
米欧はロシアが再侵攻すれば大規模な金融・経済制裁に踏み切る準備をしている。ロシアが対抗措置として欧州向けの天然ガスを停止する事態に備え、米欧が供給不足と価格高騰を回避する対策を急ぐ。天然ガス消費量の3割をロシア産に依存する欧州の不安を軽減し、対ロ制裁に慎重論が残る欧州の国に足並みをそろえるよう促す狙いもある。
28日の声明では「安定供給のための戦略的なエネルギー協力を強化する。欧州や周辺国の市民や企業が信頼し、入手しやすい価格でエネルギーを提供できるように連携する」と記した。米国はすでにEUにとって最大の液化天然ガス(LNG)供給国だと指摘し「追加供給へ各国政府や取引業者と協力している」と訴えた。
エネルギー生産国に安定供給への協力を呼びかけた。2月7日には米国と欧州によるエネルギー関連会合を開き、今後の対応を話し合う予定だ。
米政府はすでに欧州向けの天然ガスを賄うため複数国と協議を始めた。中東、北アフリカ、アジア、米国のガスと石油の関連企業が対象で「天然ガスの生産量を一時的に急増させる能力と意思を把握し、欧州に割り当てる検討をしている」(サキ大統領報道官)。バイデン氏は31日にカタールのタミム首長と会談し、協力を求める方針だ。
英BPの統計によると、欧州は2021年、ロシアからパイプラインで1677億立方メートルのガスを輸入した。LNGに換算すると約1億2300万トン規模となり、全世界のLNG年間取引量の4分の1程度にあたる。
米政府はウクライナを経由する天然ガスに加え「ロシアが(ウクライナを通らない)欧州の他のルートからの供給を遮断するシナリオを和らげる準備も進めている」(高官)。ただ、長期にわたりすべてを別の産地のガスで代替するのは難しい。

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