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米金利急上昇、株安招く NYダウ一時600ドル超下げ

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大型ハイテク株を中心に売りが先行した(28日、ニューヨーク証券取引所)=AP

【ニューヨーク=宮本岳則】金利高が世界の株式市場を揺らした。米長期金利が28日、1.56%まで上昇し、6月中旬以来の水準に達すると、ダウ工業株30種平均は一時、下げ幅が600ドルを超えた。米連邦準備理事会(FRB)など世界の中央銀行が金融政策の正常化に動き始めたことや、原油などのエネルギー価格の高騰が金利を押し上げた。インフレ懸念が強まるなか、投資家はリスクを取りづらくなっている。

28日の米株市場は欧州株全面安の流れを引き継ぎ、朝から売り先行で始まった。ダウ平均は前日に比べて569ドル38セント(1.63%)安い3万4299ドル99セントで終えた。アップルやマイクロソフトなど大型ハイテク株への売りがかさんだことで、主要3指数の中では特にナスダック総合株価指数の下げがきつい。終値ベースでみた前日比下落率は2.8%と、3月以来の大きさとなった。

米サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏は「金利の急上昇が(株売りの)カタリスト(触媒)になった」と指摘する。米長期金利の指標である10年債利回りは先週前半時点で1.3%台だったが、わずか1週間で1.56%に達した。英国債やドイツ国債など欧州圏の国債利回りも軒並み上昇している。

金融緩和期の金利上昇は景気拡大に伴う「良い金利上昇」と見なされやすい。とくに米名目金利からインフレ率を引いた米実質金利がマイナス圏にあり、緩和的な環境にある。投資家はリスクを取りやすくなり、高い成長の見込めるハイテク株に資金を振り向けた。低金利による運用難も株式への資金流入を促した。

ところが欧米中銀が相次ぎ金融引き締めに前向きな「タカ派」姿勢を見せたことで、投資家は戦略の修正を迫られている。

FRBのパウエル議長は22日の記者会見で、2022年半ばまでに量的緩和の縮小(テーパリング)を終える可能性を示した。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通しからは「22年利上げ開始」が示唆されている。英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁も27日の講演で利上げの可能性が高まっていると述べた。

金融引き締め期の金利上昇は、引き締め加速につながるとの懸念から株式は売られやすくなる。今回の金利上昇面では実質金利のマイナス幅が縮小しており、投資家はリスク資産への資金配分の見直しに動いたようだ。株価指数に占めるハイテク株の比率が高まり、「実質金利ショックに敏感になっている」(米ゴールドマン・サックス)との指摘もあった。

商品価格の高騰も投資家心理を悪化させた。

ロンドン市場の北海ブレント原油は日本時間28日の取引で、期近物が一時18年10月以来、約3年ぶりに1バレル80ドルを超えた。ニューヨーク市場でもWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物が7月以来の高値をつけた。金融情報会社リフィニティブによると、石炭価格の国際指標の一つは過去1年間で4倍近くに急騰し、08年夏以来13年ぶりの高水準になった。ニューヨーク市場の天然ガス先物も急ピッチで上昇しており、約7年半ぶりの高値圏で推移している。

FRBのパウエル議長は足元のインフレ率上昇を「一時的」と繰り返し述べてきた。ところが物価上昇圧力は根強く、FOMC後に示された物価見通しは上方修正された。エネルギー価格の高騰によってインフレ率が高止まりするようになれば、FRBはテーパリングの終了時期や利上げ開始時期の前倒しを迫られる可能性がある。不確実性が増したことで、投資家はいったんリスク回避に動いた。

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