米IT業界団体、フロリダ州を提訴 SNS企業への規制巡り

【ニューヨーク=山内菜穂子】SNS(交流サイト)運営企業による政治家らのアカウントの永久凍結を規制する米南部フロリダ州の新法が波紋を広げている。米フェイスブックなどでつくる業界団体は27日、新法は違憲として同州を提訴した。ネットでの「表現の自由」をめぐり議論は真っ二つに分かれている。
フロリダ州の新法は運営企業が州議会議員候補者らをSNS上から追放した場合、罰金を科す内容だ。24日にデサンティス知事(共和党)が署名し、成立した。フェイスブックやツイッターが1月に連邦議会議事堂占拠事件を機にトランプ前大統領のアカウントを凍結したことを受け、制定された。
デサンティス知事は「ビッグテック企業が一貫性なく検閲や規制を実施するなら責任を問われるべきだ」と強調する。同様の法案は共和党が強い地盤を持つ他州でも審議されている。
フロリダ州を提訴した2つのネット企業の業界団体には、フェイスブックやツイッター、グーグルなどが参加している。新法が表現の自由を保障する合衆国憲法修正第1条などに反すると主張している。
提訴した業界団体「NetChoice」は「修正第1条は運営会社がビジネスモデルや利用者に合わせて投稿内容を管理する権利を保護している」と指摘する。
ネット上の表現の自由を巡っては、党派による立場の違いが鮮明になっている。共和党の議員らは運営企業に対し「検閲によって保守派の発言を制限している」と批判を強めている。これに対し民主党は「誤情報や誤報が広まるのを許した」として運営企業に管理強化を義務づけることを検討している。
両党からの批判に対応するため、各社は投稿への自主規制や透明性の確保などを打ち出している。フェイスブックの第三者機関である監督委員会は5日、トランプ氏のアカウントを凍結した社の対応を支持する一方、無期限としたことを問題視して再検討を求めた。
米国では通信品位法230条で運営企業への幅広い免責を認めてきた。運営企業は利用者の投稿への責任を原則として問われない一方、削除する権利も認められている。トランプ氏は同法の廃止に意欲を示したものの実現できなかった経緯がある。