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米国、半導体工場誘致へ補助金決着 台湾依存脱却は遠く

【ワシントン=鳳山太成】米国で半導体の国産を後押しする補助金の創設が1年遅れで決着した。台湾有事が現実味を帯びるなか、同地域を含むアジアへの依存を下げる狙いだ。米国はコストを重視して生産から距離を置いてきた。国内で基盤を立て直すには課題が山積する。

議会下院は28日、半導体に527億ドル(約7兆1000億円)の補助金を投じる法案を賛成多数で可決した。上院は可決済みで、バイデン大統領の署名で成立する。

目玉は2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間、国内に半導体工場を誘致するための390億ドルだ。米国で新工場の建設を表明している米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子に支給する見通しだ。

半導体工場の誘致合戦が激しくなるなか、米国もようやく補助金を出す。日本は既に約6000億円の基金をつくり、TSMCの熊本工場などへの支給を決めた。米国では21年夏に法案成立の機運が高まったが、与野党の審議が難航して長引いた。

米国は市場の自由競争を重視してきた。産業政策を転換し、特定企業を国費で支援するのは「半導体を台湾に頼るのは危険で、米国で生産しないといけない」(レモンド商務長官)との認識が与野党で急速に広まったからだ。

米国半導体工業会(SIA)によると、米国生産の世界シェアは20年に12%と30年前から25ポイント下がった。台湾や韓国がそれぞれ2割、日本と中国が15%で続く。

米国で半導体をつくるコストは10年間の建設費や運営費で比べると、台湾や韓国より3割高いとされる。市場をゆがめかねない補助金には批判がつきまとうが、その多寡が競争力を左右する結果になっていた。バイデン大統領は「(補助金を出せば)外国への依存が下がり、安全保障を強化できる」と期待する。

中国は台湾への圧力を強めており、軍事侵攻が現実味を帯びる。米戦略国際問題研究所(CSIS)のジェームス・ルイス氏は「必要なのは米国産の拡大というより、中国と台湾への依存引き下げだ」と指摘する。

政権や議会の狙い通りの結果を生むとは限らない。台湾は虎の子の最先端半導体を外に出さず、台湾域内に生産を集中させている。回路線幅10ナノ(ナノは10億分の1)メートル未満の最先端品は台湾が世界生産の9割を占める。

米国企業は資産効率を高めるため、生産を外部に委託するファブレス(工場なし)に軸足を移してきた。同時に工場を運営する人材や部材の供給網も衰退した。こうした流れを逆転させるのは一朝一夕ではできない。

半導体不足は自動車や家電の生産を滞らせ、世界的なインフレの一因となった。バイデン氏は補助金で「毎日使う製品のコストが下がる」と成果をうたうが、新工場が立ち上がるのは2~3年後だ。供給過剰に陥れば、各国の補助金が貿易摩擦の火種になりかねない。

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