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イラン外相の音声流出、核合意再建へ波紋

イランのザリフ外相は穏健派として知られ、核合意を立て直す立場にある=AP

【ドバイ=岐部秀光、ワシントン=中村亮】イランのザリフ外相の肉声とされる音声の流出がイラン核合意の再建交渉に波紋を広げている。イランでは核合意の立て直しを探るザリフ氏が反米意識の強い軍組織を批判したとして対米強硬派が反発。米国でもバイデン政権高官が過去にイランへ機密を漏らした疑惑が浮上し、政権の対イラン融和方針に反発が広がる。

米国とイランは27日、オーストリアの首都ウィーンで核合意再建に向けた間接協議をした。米国はこれまでの協議で、イランへの経済制裁のうち解除対象とするリストを示しており、今回もリストの詳細を協議したとみられる。協議では米国による制裁解除とイランによる核開発制限の履行に向けた手順などが焦点になっている。

協議に先立ち、米国とイランの交渉に新たな火種が加わった。英国に拠点を置く中東系メディアが報じたイランのザリフ氏の音声の記録だ。政権の成果を記録する目的で3月に収録したとされる。ザリフ氏は穏健派で国際協調路線を志向し、核合意を立て直す役割を担っている。

録音によると、イランのエコノミストとの会話でザリフ氏は「イランでは軍部と外交(の力関係)があべこべになっている」などと述べた。イラン革命防衛隊のカリスマ司令官で2020年1月に米軍に殺害されたソレイマニ氏についても、シリア政策や対ロシア外交で外務省に過大な要求を突きつけていたと批判した。革命防衛隊は1979年のイスラム革命の守護者を自任し、最高指導者ハメネイ師に直結する強力な組織。イランではその批判は大きなタブーだ。

真偽や流出した背景などは不明だが、イラン国内の穏健派と強硬派の分断を示している可能性がある。保守系のタスニム通信は「このような誤った認識が国家に損害を与えてきた」とザリフ氏を批判した。6月の大統領選挙は強硬派が優勢とされる。核合意の修復をめぐる交渉は現政権のうちに道筋がつかなければ、次期政権での交渉は一段と困難になる。

音声記録は米国にも飛び火した。録音によると、オバマ政権で国務長官を務めたジョン・ケリー氏がザリフ氏に対し、イスラエルがシリアでイラン関連施設などを少なくとも200回にわたって攻撃したと伝えた。ザリフ氏はケリー氏が機密情報に触れたことに驚いたという。

野党・共和党からはケリー氏への批判が相次いだ。ダン・サリバン上院議員は米メディアのインタビューで「ケリー氏はこれまでに耐えがたい数多くのことをしたが、今回は堪忍袋の緒が切れた」と不満をぶちまけた。穏健派のミット・ロムニー上院議員も「とても困った出来事だ」と懸念を示した。

共和党は対イラン強硬派が多く、大半の議員が核合意復帰に反対している。ケリー氏がバイデン政権で大統領特使(気候変動問題担当)を務めていることもあり、共和党はバイデン政権のイランとの対話路線に一段と反発する公算が大きい。

ケリー氏は26日、機密漏洩の疑惑について「明らかな誤りだと言える。国務長官在任中もそれ以降もこのようなことはなかった」とツイッターで否定した。ケリー氏はザリフ氏に伝えた数字は公開済みの情報だとの認識を示している。

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