新型コロナ発生源は「武漢の市場」 新研究指摘、異論も

【シリコンバレー=佐藤浩実】新型コロナウイルスをめぐり、中国武漢市の卸売市場を発生源ととらえる研究が27日までに相次ぎ公開された。米国などの科学者グループが空間分析やゲノム解析を通じ、市場で販売していた野生動物がウイルスを保有していた可能性が高いと指摘した。ただ論文は査読前で、結論づけるには「不十分」との声もある。
2つの科学者グループが研究結果を公表した。米アリゾナ大学のマイケル・ウォロビー教授(進化生物学)らの研究では空間分析を用いて、2019年12月の武漢のコロナ感染者の分布などを検証した。遺伝子データも組み合わせて発生源を探った。
市場内で生きた動物を販売していた事業者の分析なども踏まえ「華南海鮮卸売市場がパンデミックの震源地だと明らかになった」と結論づけた。米カリフォルニア大の研究者やウォロビー氏などが参画したもう1つの研究では、動物から人への感染を指摘した。
卸売市場で人への感染が始まったとする説は、コロナ感染が広がった当初から科学界で有力視されてきた。一方で、武漢のウイルス研究所から流出したとの見方もある。これまでも複数の機関による調査が行われてきたが、発生源をめぐる明確な結論は出ていない。
米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのジェシー・ブルーム氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、ウォロビー氏らの研究は「データの質が(市場発生源説を)真実であると確信させるには十分ではない」と指摘した。
米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界のコロナ感染者は累計で4億3400万人を超えた。これまでに600万人近くが亡くなっている。

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