FRB議長「コロナ再拡大が経済の重荷」 記者会見要旨 - 日本経済新聞
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FRB議長「コロナ再拡大が経済の重荷」 記者会見要旨

(更新)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染再拡大が「経済活動の重荷となっている」と述べた。発言の要旨と質疑応答の概要は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、一定量の国債購入を維持すると決めた。こうした施策は、金利とバランスシートに関する我々の力強いガイダンス(指針)と合わせて、金融政策が経済回復をなし遂げるまで経済を強く支えることを保証するだろう。

経済回復の軌道は新型コロナウイルスの感染動向に大きく依存する。ここ数カ月の入院患者数や死者数の増加は何百万人もの米国人にとって大きな困難となっている。経済活動や雇用の創出の重荷となっている。2020年夏の急激な経済回復の後、そのペースはここ数カ月で鈍ってきた。経済の弱さは、感染再拡大とソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の施策の拡大に悪影響を受ける特定の産業に偏っている。

家計のサービス消費は弱いままだ。特に旅行やホテル業界など人が近くに集まることを必要とする業種が厳しい。モノへの消費は大きな回復の後は鈍ってきた。対照的に、住宅市場は低金利に支えられ、経済が減速する前以上に回復した。企業による設備投資や製造業生産も持ち直してきた。

全般に経済活動が回復したのは、政府による家計支援や、失業保険の拡大によるものだ。このほど成立した追加経済対策はさらなる支えとなるだろう。経済活動全体としてみれば引き続き新型コロナ以前の水準を大きく下回っており、先行きは極めて不透明だ。

雇用情勢の改善ペースは鈍ってきている。感染再拡大に伴う雇用の喪失が継続的な回復を上回っている。特に、娯楽やサービス分野は飲食店を中心に約50万もの雇用が失われた。サービス分野で働く低賃金の労働者やアフリカ系米国人、ヒスパニック系の人が大きく打撃を受けている。物価上昇率は12カ月平均で長期的な目標である2%を下回っている。

我々が直面する課題を過小評価すべきではないが、今年後半の見通しを明るくするいくつかの進展もみられる。十分にワクチン接種が広がれば、我々はパンデミック(世界的大流行)から抜け出しより普通の経済活動に戻れるだろう。財政政策による支援は回復を妨げうる経済への打撃を抑え、家計や企業の先行きを晴らす。金融政策も回復を促す上で重要な役割を果たしており、今後も続ける。

きょう、我々は満場一致で目的と金融政策に関する声明を再確認した。最大雇用は基礎的かつ包括的な目標だ。数年先に最大雇用を達成するには、長期的な物価上昇期待が2%に固定されるかが重要だ。FOMCが声明で繰り返したように、物価上昇率が2%をずっと下回るようなら、我々はしばらくの間、2%を適度に超えるように目標を定めるだろう。雇用と物価目標が達成されるまで、我々は緩和姿勢を維持する。

我々は米国債の購入を少なくとも月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで買い入れる施策を、完全雇用と物価安定目標に向けて十分に近づくまで続ける。我々の目標への道のりは長く、十分な進展が見られるには時間がかかるだろう。

政策金利に関するフォワードガイダンスとともに、大規模な金融緩和を続けるという姿勢を裏付けるものだ。ガイダンスは成果に基づくもので、雇用や物価目標の達成度合いに結びついている。目標に向けた進展が鈍ければ、政策金利やバランスシートの予想を通じて緩和拡大の意図が伝えられることになるだろう。我々はあらゆる手段を使って経済を支え、この困難な時期からの回復ができる限り力強いものになるのを支える。

――ゲームストップなど一部の個別株が乱高下しているがどうみるか。ビットコインや株式など資産価値が上昇しているが、ゼロ金利や量的緩和との関連は。

「特定の株式についてはコメントしない。パンデミックによる失業者や経済活動への打撃の規模は過去に例がなかった。我々は金融市場の機能回復と景気回復を助ける施策を実施し、経済への長期的な打撃の回避を目指している。(コロナ禍で)1年たっても10%近い実質失業率を抱えているいま、金融政策を極めて緩和状態に維持することは適切だ」

「リーマン・ショック後に我々は金融市場全体のリスクをみる枠組みを作り、銀行、ノンバンク、企業、家計における負債や資産価格を注意深く監視してきた。ここ数カ月間で資産価値を高めてきたのは金融政策ではなくワクチン普及と財政政策への期待だ。低金利と資産価値の関係は人々が考えているほど緊密ではない」

――資産価値の状況を踏まえて金融政策を調整する可能性はないのか。

「非常に難しい問題だ。金融システムの安定には金融政策よりも(金融システム全体のリスクを把握する)マクロプルーデンス政策を活用している。資産バブルに対応するために利上げして金融を引き締め、経済活動を減速させることが良いのか。これは未解決の問いだ。理論的に除外するつもりはないが、今まで実施したこともなく、今後も実施する計画はない」

―― マクロプルーデンスの観点で、ノンバンクの抱える金融リスクにどう対応するか。

「銀行については、ストレステスト、流動性や資本の水準引き上げなどマクロプルーデンスの観点で政策を適用してきた。ノンバンクについては、その多くの分野で我々が監督権限を持っていないため、他の政府系機関や地方当局がみている。我々は金融安定監視評議会(FSOC)を通じて協力している」

「今回の危機において銀行システムは持ちこたえており、パンデミックに伴う金融システムへの打撃はノンバンクにあらわれた。今後ノンバンクに必要なことを注視深く検証する予定だ」

――量的緩和の縮小(テーパリング)の時期をどう考えているか。

「我々の金融政策は適切で、雇用など経済活動を大きく支えている。住宅や耐久消費財、自動車販売など、景気動向に敏感に反応する部門では強い効果が表れている。我々にできることはまだある。資産購入では、適切と判断すればガイダンスを(緩和方向に)強化することもできる。ワクチン普及と財政政策への期待から今年後半に景気が底堅くなるとの見方があるが、まだ見通しには深刻なリスクがある」

「テーパリングについて話すのは時期尚早だ。当面は目標に向けた進捗状況を注視すべきだ。時期が来れば(テーパリングを)検討することを事前に周知するので、驚きはないだろう。非常に慎重に実施するつもりだ。できるだけ早く人々を仕事に復帰させることが不可欠で、そのためにできる限りのことをする」

――新政権になったが、さらなる財政出動が必要とみているか。消費者への直接支援はインフレを引き起こすのでは。

「これまでの経済対策は強力で、20年12月に通過した追加対策も合わせていまの景気回復が可能になった。過去の事例をみても財政政策は極めて重要だ。ただ景気の完全回復にはまだほど遠い。約900万人がいまだ失業状態であり、リーマン・ショック時のピークに失った雇用とほぼ同水準だ。中小企業の業績悪化圧力も大きく、先行きは不透明だ。もっともどれだけ財政出動するかを決めるのはFRBではない」

「我々は長らくディスインフレ(物価上昇の鈍化)と戦っている。欧州や日本など世界の経済大国では物価に下押し圧力がかかっており、物価目標を下回って推移している。むしろ雇用が完全回復せず、長らく仕事に戻れないことの方が心配だ。米国経済全体に与える損失は大きい。率直に言って、やや高い物価上昇率は歓迎だ。現状では厄介なインフレは起こりにくいだろう」

「パンデミックが収束し、経済活動が再開して消費が急拡大し、物価が上昇するという見解があるが、一時的だろう。過去の例を踏まえ物価上昇が深刻になることはないとみている。仮に深刻化しても対応する手段がある。むしろ低すぎる物価上昇率に対応する方が難しい」

――低金利で住宅価格が高騰している。バブルが生じている懸念はないか。

「住宅市場はリーマン・ショック前以来の活況を呈している。在庫逼迫で激しく価格が上昇しているが、一時的な現象だと考えている。(パンデミックで)人々が家で過ごす時間が長くなったことによる、大きな家への住み替え需要も一度きりのものだ。高騰が持続する可能性は低い」

――前FRB議長のイエレン財務長官と、どのように協力していくのか。

「私はイエレン氏に対して最高の敬意と称賛の気持ちを持っている。政策運営上、良好な関係を築くことができると確信している。どのように組織が機能しているのか互いに熟知しているので、生産的にかつ協調して仕事できるだろう。まだイエレン氏とは話していないが、近いうちミーティングが開かれるだろう。しばらくは『イエレン議長』と呼び間違えてしまうかもしれない。バイデン大統領とはまだ会っていない」

――パウエル議長はコロナワクチンを接種したか。ワクチン普及の見通しは。

「私はワクチンを1回接種し、2回目をまもなく受ける予定だ。集団免疫の達成には時間がかかる。ワクチンよりも景気回復において重要な要素はない。パンデミックが収束しなければ、飲食店などの雇用は最後まで戻ってこない。パンデミックを制御し、皆がワクチン接種を受け、マスクを付けるといったことが、経済成長のための最も重要な施策だ」

――パンデミックによる労働市場への長期的ダメージをどうみるか。また人種間の経済格差が経済成長の妨げになっているとの議論に同意するか。

「まだわからない。多くの人はパンデミックを乗り越え、職も家も無事だった。だが乗り越える方法のない人もまた大勢おり、我々は彼らに焦点を向けている。(人種間の格差が経済成長を妨げているという点は)強く同意する。我々が不平等、特に人種間の不平等を語るのは、最大雇用の達成という我々の仕事に関わるからだ。我々は誰もが経済活動に参加し、就労し、繁栄を共有することを望んでいる」

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