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「強い雇用創出続く」 FRB議長講演要旨

(更新)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、オンライン方式で開催された国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。要旨は以下の通り。

米経済が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に直面してから17カ月たった。感染防止のため大半の経済が閉ざされ、米経済に急速かつ前例のない減速をもたらした。強い政策が経済を活発にしたが、回復には濃淡がある。

景気減速の典型と異なり、個人所得は全体で減るのではなく増え、個人消費の多くはサービスからモノへ移行した。モノの消費増と経済再開の早さが供給制約をもたらし、供給が追いついていない。

パンデミックによる景気後退はこれまでで最も短かった一方、最も深刻だった。わずか2カ月間で3000万人が職を失った。回復も予想を超える速さだった。回復が進みながらも、サービス業で働く低賃金のアフリカ系、ヒスパニック系米国人の労働者は依然として雇用喪失の打撃を大きく受けている。

最大雇用へ見通しは良好

労働市場の見通しはここ数カ月でかなり明るくなった。過去3カ月の平均で(非農業部門の)雇用者数は83万2000人増え、うち約80万人はサービス産業でみられた。失業率は5.4%とパンデミック下で最も低水準になった。それでもなお高く、労働市場におけるひずみを反映できていない。

ワクチン接種率が上昇し、学校が再開し、失業給付の加算も終わることで、求職活動をおしとどめていたものが消え始めている。コロナのインド型(デルタ型)が直近のリスクだが、最大雇用を目指す回復継続へ見通しは良い状態だ。

物価上昇、供給不足緩和で安定へ

急速な経済再開は鋭い物価上昇をもたらした。7月の個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率(コア指数)は3.6%と、2%の物価目標をはるかに上回る。企業や消費者は物価と賃金で上昇圧力があると報告している。こうした高水準の物価上昇は当然懸念ではあるが、一時的とみている。物価上昇率の評価は極めて重要かつ進行中のものだ。我々は今後のデータを注意深く観察する。

物価の急上昇は、パンデミックと経済再開の影響を受けた限られたモノとサービスで生じている。耐久消費財やエネルギーによる物価の押し上げは経験則から一時的とみている。モノやサービスは供給不足が緩和されれば価格は安定する。例えば中古車価格は安定し、下落を示す指標もある。耐久消費財についても、物価上昇に長期的に影響を与え続ける可能性は低い。

賃金上昇は生活水準の向上に不可欠であり、歓迎すべきだ。ただ賃金上昇が生産性の向上や物価上昇を上回って推移した場合、企業は顧客に(価格として)転嫁し、過去にみられた「賃金と物価のスパイラル」となる可能性がある。現時点で過度の物価上昇につながる賃金上昇はみられていない。

我々の金融政策の枠組みでは、長期的な期待物価上昇率を2%に固定することが、最大雇用と物価安定にとって重要だ。1990年代以降、多くの先進国の物価上昇率は好況期でも2%をやや下回っている。技術、グローバル化、人口など物価上昇を妨げる要因と、物価安定に向けた中央銀行による強力な政策が背景にある。米国でもパンデミック前は2%を下回っていた。根底にある世界的なディスインフレの動きが突然逆転するとは考えにくく、引き続きデータを注視する。

デルタ型拡大の影響見極め

中央銀行が(インフレについて)一時的な要因の解決のために政策を引き締めると、その効果は(引き締めが)必要なくなった後にあらわれる可能性がある。タイミングの悪い政策は、雇用や経済活動を不必要に減速させ、物価上昇率を押し下げる。現時点で労働市場にはかなりのひずみが残っており、パンデミックが続いているため、このような間違いは特に悪影響を及ぼす可能性がある。

今後は需給の不均衡の改善や、緩やかな物価上昇の継続を示すデータが得られるだろう。力強い雇用の創出も続くと予想している。デルタ型の影響は見極めているところだ。現状で金融政策は良い状態にあると確信しており、我々の目標を達成するため、政策を適切に調整する用意がある。

20年12月にガイダンス(指針)を発表して以降、最大雇用と物価安定目標に向けたさらなる著しい進展がみられるまで、現状のペースで資産購入を継続すると述べた。物価上昇については「さらなる著しい進展」がみられ、最大雇用に向けた明確な進展もあったとみている。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、私は多くの参加者と同様、経済が広範囲に回復すれば2021年中に資産購入ペースを減速させ始めることが適切だとの考えに立った。

テーパリング、利上げ時期を直接示唆せず

その後、労働市場で多くの進展があった一方、デルタ型の感染が拡大している。我々は台頭するリスクと今後のデータを注意深く評価する。資産購入が終わっても、FRBが高水準の長期債を保有していることが緩和的な金融環境を支える。

今後の資産購入の減額の時期や速度は、直接的に利上げの時期を示唆するものではない。我々は最大雇用が継続し、物価上昇率が2%に達して2%を緩やかに上回る状態が一定期間続く軌道に乗るまで、政策金利目標を現状の水準で維持すると述べてきた。最大雇用の実現にはまだ多くの課題があり、2%の物価目標を持続可能なペースで達成できたかの判断は、今後わかるだろう。

パンデミックは人々の健康と経済活動に前例のない損害をもたらしており、困難な時期を迎えている。ただその前には、強い労働市場が社会に並外れた恩恵をもたらしてきた。経済は再びそうした労働市場に向けた軌道に乗っており、高水準の雇用や労働参加率、広範囲の賃金上昇につながり、物価上昇率も我々の目標に近づいている。

(ニューヨーク=大島有美子、野村優子、吉田圭織)

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