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宇宙ステーション安定運用に暗雲 ロシア「24年以降離脱」

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【ワシントン=鳳山太成】ロシアが26日、国際宇宙ステーション(ISS)から2024年以降に離脱すると表明した。米国はISSの運用期限を同年から30年まで延ばす方針だが、ISSの主力参加国であるロシアが不在となれば計画の見直しを迫られる。ISSに参加する日本の有人宇宙開発にも影響を及ぼす可能性がある。

ロシアメディアによると、ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスのボリソフ社長は26日、プーチン大統領との会談で「24年以降のISS離脱を決めた」と伝えた。プーチン氏も承認した。

ボリソフ氏は「パートナーとの義務を完全に果たす」と述べ、現行の運用期限である24年まではISS計画にとどまる意向を示した。24年以降、いつ離脱するかは明示していない。同年までにロシア独自の宇宙ステーションの開発を始めるという。

米ホワイトハウスは26日、ロシアから正式な通知を受け取っていないと説明した。バイデン政権はISSの運用期限を30年まで延ばす方針を示し、最大の協力国であるロシアの同意が焦点となっていた。

ISSは日米欧とカナダが運用する設備と、ロシアが運用する設備に大きく分かれている。それぞれ通信や電力供給などは独立しており、ロシアが抜けてもただちにISS全体が使えなくなるわけではない。

ただ安定した運用には課題が残る。ISSへの有人輸送は米ロ協力が前提だ。ロシアが抜ければ、飛行士の滞在計画や輸送手段で余裕が乏しくなる。

米航空宇宙局(NASA)とロスコスモスは7月中旬、互いの飛行士をそれぞれの宇宙船に搭乗させる契約を結んだ。秋に打ち上げられる米スペースXの「クルードラゴン」には日本の若田光一飛行士らとともに、ロシアの飛行士が初めて乗る。米ロはISSを安全に使うため、両国の飛行士が同時に滞在する状況を維持できるよう努めてきた。

輸送手段がひとつ欠ければ定期的に人を送り込んだり緊急時に帰還させたりする計画も見直しが必要だ。米スペースシャトルが11年に退役した後、米国や日本の飛行士はISSと行き来するのにロシアの「ソユーズ」に頼っていた。

日本は実験棟の建設や物資補給で米ロに次ぐ重要な役割を担ってきた。ISSの計画変更は他国に影響が及ぶ。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「ロシアが抜けた場合の影響を和らげる選択肢を検討している。すべての参加国と協力して安定した運用と飛行士の安全を確保する」と強調した。

宇宙で激しく競い合った米ロが1993年に手を結んだISSは、冷戦終結を象徴する国際協力計画だ。21年にISSに長期滞在したNASAのメーガン・マッカーサー飛行士は「週末には互いの施設で夕食をともにし、ロシア側とは家族のような関係を築いた」と話す。米ロが協力関係を断ち切れば、時代の逆戻りを意味する。

米国務省のプライス報道官は26日の記者会見で、「重要な科学研究や、長年にわたる価値のある専門的協力を踏まえると残念な展開だ」と語った。

エマニュエル駐日米大使も27日、都内で記者団に「ISSは冷戦後の米国やロシア、ほかの国際社会との平和、協力の象徴だった。ロシアはウクライナで主権を害しただけでなく、宇宙での協力に関しても背を向けたことになる」と批判した。そのうえでロシアの離脱で「宇宙での競争が激しくなることになる」と語った。

中国は25日、独自に建設している宇宙ステーションに実験施設を接続することに成功した。ロシアは中国と月探査でも協力を探る。ロシアがISSを抜ければ、宇宙でも日米欧と中ロの2陣営が競う構図が鮮明になる。

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