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米ロ関係改善、疑心暗鬼 新START延長で大筋合意

(更新)
バイデン米大統領㊧はオバマ政権時、副大統領として米ロ関係の改善に向けて奔走した(2011年3月)=AP

【ワシントン=中村亮、モスクワ=小川知世】米ロ両政府は26日、新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長で大筋合意した。軍拡競争回避へ協調を打ち出したが、バイデン米政権はロシアによるサイバー攻撃疑惑や反体制派の拘束を巡る人権問題を強く批判している。米ロ関係の改善には高いハードルがある。

バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が26日、電話協議した。ロシア側が公開した資料によると、在ロシア米大使館が26日に文書で2026年2月までの延長をロシア外務省に提案し、ロシア側も文書で同意した。ロシア上下両院は27日、延長に関する法案を承認した。近く正式合意に達する見通しだ。

新STARTは米ロ間に残された唯一の核軍縮条約だ。戦略核弾頭に加え、核弾頭を攻撃対象に向けて運ぶ戦略爆撃機や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の配備数に上限を設ける。2月5日に期限が迫り、失効すれば中国を交えた軍拡競争に拍車がかかると懸念されていた。

米ホワイトハウスによると、米ロは「戦略的安定に関する議論」を行う方向で一致した。米国内には核軍縮の枠組みに中国を加えるべきだとの意見が根強いが、今回は棚上げした。条約の制限対象外である射程の短い戦術核の扱いも焦点で、米ロは積み残した課題について議論を続ける。

中国は軍縮交渉への参加を拒否してきた。外務省の趙立堅副報道局長は27日の記者会見で新STARTの延長について「歓迎する。世界の安定に貢献するだろう」と述べた。「米ロの核兵器の数量は世界の90%以上を占める」と語り、米ロが率先して核削減に取り組むように促した。中国の参加の可能性を問われると「中国の立場は一貫しており明確だ」と否定した。

米ロの思惑のずれも浮き彫りになった。ロシア大統領府は両首脳が電話協議で「外交文書の交換によって26日に合意した条約延長に満足の意を表した」と発表した。同日下院に提出された延長に関する法案と併せて、米大使館から届いた文書も公開し、合意を積極的にアピールした。電話協議はロシア側が提案し、軍縮問題を関係正常化の糸口としたい考えがうかがえる。

米ホワイトハウスは声明で、2月5日の延長期限までに「双方が迅速に取り組むことで合意した」と微妙な言い回しを使い、延長合意を全面的には打ち出していない。バイデン氏が「米国や同盟国に害を及ぼすロシアの行動に対抗し、国益を守るために断固として行動すると明確にした」と明記。ロシアに厳しい姿勢は軟化させなかった。

バイデン氏は米ロ間には対立の火種が山積しているとみている。バイデン政権は、ロシアが米連邦政府機関に対する大規模なサイバー攻撃を行ったとの見方を強めている。米情報機関はロシアが20年11月の米大統領選に介入を試みたと主張する。ロシアがアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンに対して米兵殺害の報奨金を支払った疑惑も浮上している。バイデン氏は26日の電話協議でいずれの案件でも「懸念」を伝えたが、プーチン氏は関与を否定したとみられる。

バイデン氏はプーチン氏との電話に先立ち、欧州に周到な根回しをした。ロシアの挑発行動に厳しく対処する姿勢を伝え、対ロ包囲網の構築で協力するためだ。26日までに英独仏の首脳とそれぞれ電話し、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長とは集団的自衛権を定めた北大西洋条約第5条の順守を確認した。ロシアが念頭にあるのは明らかだ。

主要7カ国(G7)の外相は26日、ロシア当局が拘束した反体制派指導者ナワリヌイ氏の即時釈放を要請する共同声明を発表した。「政治的な動機」による拘束だと断じて非難した。人権を重視し、国際社会と協力して政策変更を迫るバイデン政権の方針を映した。ロシアは「内政干渉」と取り合わない構えだ。

米ロは協調を探っては対立を繰り返してきた。上院外交委員長や副大統領としてロシア外交に関与したバイデン氏にとって大きな教訓になっているとみられる。ロシアは「米国も中ロ抜きには何もできない場面では合意を迫られる」(ラブロフ外相)と主張するが、相互の不信感は根強い。

ブッシュ政権(第43代)はテロ対策でロシアと協調を打ち出したが、ロシアは08年にジョージアを侵攻し米ロ関係は悪化した。オバマ政権は米ロ関係の「リセット(再起動)」を掲げ、10年に新STARTを締結した。

同政権で副大統領を務めたバイデン氏も政権発足直後に国際会議で「リセットのボタンを押すときが来た」とロシアに呼び掛けた。だがロシアは14年にウクライナのクリミア半島の併合を一方的に宣言し、米欧は対ロ制裁を発動した。

トランプ前大統領はNATOを批判し、プーチン氏と緊密な個人的関係の構築を目指した。米情報機関の評価に反し、ロシアによる米選挙への介入を否定したこともあった。米議会やメディアから猛反発を浴びて、対ロ強硬姿勢を出さざるを得ない状況に追い込まれて制裁を強化していった。

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