米GDP、7~9月2.6%増 3四半期ぶりプラスも消費は減速

【ワシントン=高見浩輔】米商務省が27日発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比の年率換算で2.6%増だった。3四半期ぶりのプラス成長だが、個人消費は減速した。米連邦準備理事会(FRB)による急速な利上げが景気を下押ししており、高インフレが和らぐかが焦点となる。米景気の停滞は世界経済の失速リスクを高める。
事前の市場予測は2.3%増で、公表値はこれを上回った。1~3月は1.6%減、4~6月は0.6%減だった。7~9月は輸出の伸びが拡大し成長に寄与した一方、GDPから差し引く輸入が6.9%減った。輸入が前期を下回ったのは20年4~6月以来だ。

7~9月は3四半期ぶりにプラス成長に戻ったが、経済はむしろ減速が目立ち始めた。個人消費は1.4%増と、4~6月の2.0%増から減速した。消費者物価指数の上昇率は6月に前年同月比9.1%と40年半ぶりの水準を更新した後、9月まで8%台で高止まりしている。物価の伸びに賃上げが追いつかず、高額消費などに影響が出ている。
サプライチェーン(供給網)の混乱による部品などの供給不足もまだ消費の足かせになっている。「在庫不足と需要の減退が販売台数を抑えている」(ニューヨーク州北部の自動車ディーラー)。FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)ではこうしたコメントが紹介された。
米経済は4~6月期まで2四半期続けてマイナス成長だった。機械的には景気後退とみなされるが、実態をうまく映していなかったと見る専門家は多い。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたことで消費が回復し、中国などからの輸入が増えてGDPが押し下げられていた面がある。
FRBは高インフレの抑制を最優先とし、利上げによっていったん経済を減速させようとしている。その効果が経済全体に波及するには半年から2年ほどかかるが、金利の動きに敏感な住宅業界などには先に影響が出ている。
4~6月に17.8%減と急減した住宅投資は7~9月も26.4%減と落ち込んだ。30年固定の住宅ローン金利は利上げに伴って急上昇し、10月中旬には7%を超えて21年ぶりの高水準となった。9月の新築一戸建ての住宅販売件数は前年同月を18%下回る水準に落ち込んでいる。
企業の設備投資は4~6月に0.1%増と減速したが、7~9月は3.7%増となった。資金を借り入れる際の金利が上昇しているうえ、米国経済が2023年にも景気後退に陥るという予想が広がっているため、企業活動は今後慎重になる可能性がある。
一般的には景気が悪化すれば需要が減ってインフレ圧力が弱まり、中央銀行は金融緩和などの刺激策に乗り出す。ただ米経済は新型コロナ禍を経て極端な人手不足に陥っており、賃金の上昇圧力が高インフレを長期化させかねない状況にある。FRBの高官は23年中の利下げ転換に慎重で、景気の停滞局面が長引く可能性もある。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)