Apple、米国で時給2800円に 店舗で労組結成の動きも

【シリコンバレー=佐藤浩実】米アップルが米国の店舗などで働く従業員の最低時給を22ドル(約2800円)に引き上げることがわかった。26日までに複数の米メディアが伝えた。インフレが続くなか、賃金を上げることで人材確保につなげる。待遇改善を求めて店舗で広がる労働組合結成の動きに対処するねらいもあるようだ。
報道によれば「アップルストア」で働くスタッフの時給は22ドルからとなり、4月時点で公表していた20ドルから2ドル上がる。2018年の水準と比べると45%の上昇だという。このほど、給与に充てる予算を増やす方針を従業員に伝えた。アップルの店舗は米国内に約270あり、地域の賃金相場に応じてさらに増やす場合もある。
時給引き上げの背景にあるのは長期化するインフレだ。米労働省によれば、4月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比8.3%だった。食品やガソリンといった生活必需品の価格が上がるなかで、労働市場の逼迫も続く。働き手を集めるために賃上げする企業も増えており、アトランタ連銀が算出している賃金上昇率は4月に6.6%となった。
働き手の間ではさらなる待遇改善を求める動きが広がる。アップルではニューヨーク市など一部の店舗で、最低時給30ドルを実現するため労組の結成をめざす従業員が出てきた。同市にあるアマゾン・ドット・コムの物流施設では4月に初の労組結成が決まり、同様の動きはスターバックスなどにも及ぶ。
アップルは労組に否定的な立場をとっており、時給の引き上げといった対策を通じて従業員を懐柔するねらいとみられる。アップルからの回答は得られていない。
このほか、アップルは時給制でない従業員の報酬も引き上げるもようだ。米IT(情報技術)企業ではマイクロソフトなども給与に充てる予算を増やす方針を明らかにしている。
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