米の人口増加、史上2番目の低水準 20年国勢調査

【ワシントン=永沢毅】米国勢調査局が26日発表した2020年の米国勢調査によると、米国の人口は3億3144万9281人となり、10年前の前回調査と比べて7.4%の増加にとどまった。世界大恐慌期を含む1940年の調査(10年前比で7.3%増)に次いで史上2番目に低い伸び率となった。
米国勢調査は10年に1度の実施で、4月1日時点の人口を調べた。伸び率が前回調査(10年前比で9.7%増)からさらに縮小して低水準にとどまったのは、白人層の高齢化と出生率の低下、移民流入の鈍化が主因とみられている。人口増が支えてきた米国の経済成長力は曲がり角を迎える。米商務省は40年調査の人口の伸びが低かった理由を世界恐慌が影響したためと分析している。
今回の調査で、全米50州で人口増加率が最も高かったのは西部ユタ州で18.4%増だった。このほかアイダホ州やテキサス州など西部や南部の州で高い伸び率が目立つ。減ったのは3州で、南部ウェストバージニア州(3.2%減)、南部ミシシッピ州(0.2%減)、中西部イリノイ州(0.1%減)だった。
米国の4つの地域別にみると、南部と西部は9~10%台の増加率だった。北東部と中西部は3~4%台にとどまった。国勢調査の結果に基づき配分が決まる米下院の議席数(定数435)と大統領選の選挙人数の増減は共和党に追い風になる公算が大きい。
下院の議席は州の人口に基づいて割り当てられる仕組みだ。今回も北東部と中西部の州で議席が減り、南部と西部が増える長期的な傾向に沿う結果となった。
増加するのは南部と西部の6州で、南部テキサスが2議席、同フロリダや同ノースカロライナなど5州は1議席ずつとなった。テキサス、フロリダ、ノースカロライナは2020年大統領選でいずれも共和党のトランプ前大統領が制した。
減少するのは7州で、西部カリフォルニアや東部ニューヨーク州など民主党が地盤とする州を中心に1議席ずつ減る。カリフォルニアの減少は初めてで、ニューヨークはあと89人の人口を確保していれば議席を減らすことはなかった。
下院で民主党は218議席と過半数を確保しているが、共和党との差は6議席と拮抗している。選挙区の区割り作業は21年後半以降に始まる。連邦議会下院の区割りは州議会に権限があり、共和党が主導するテキサスやフロリダなどでは自らに有利に働くよう恣意的に作業を進めるのは確実だ。このため、22年中間選挙で同党に有利になる公算が大きい。

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