Apple、アプリの値付け柔軟に 開発者との訴訟で和解へ
【シリコンバレー=白石武志】米アップルは26日、スマートフォン「iPhone」上などで流通するアプリについてより柔軟な値付けを認めると発表した。これまでは「1.99ドル」や「2.99ドル」といった設定しか認めておらず、意図的に価格がつり上げられていると問題視するアプリ開発者らが見直しを求めて集団訴訟を起こしていた。アップルは要求を受け入れることで原告側と和解する考えだ。
米カリフォルニア州内のアプリ開発者らが2019年に起こしていた集団訴訟で、原告側はアップルが自社製品向けのアプリ配信サービス「アップストア」上で流通するアプリの値付けを制限するのは反トラスト法(独占禁止法)に違反すると主張。同社に対しアプリの価格制限を禁じ、損害を賠償するよう求めていた。
和解に向けた今回の合意には、アップストア上で配信する有料アプリやサブスクリプション(継続課金)型サービスなどについて、開発者が設定できる価格をより柔軟にすることを盛り込んだ。開発者が選べる価格の種類は100未満から500以上に増えるという。
アップルは原告側との間で小規模事業者を支援する総額1億ドル(約110億円)の基金を設立することでも合意した。一定の条件を満たすアプリ開発者は過去のアップストア上の収益に応じて同基金から250ドルから3万ドルの支払いを受けられる。対象となるのは年間のアプリ販売額が100万ドル未満のアプリ開発者で、約6万7000社とみられる。
原告側は訴状の中で、アップルが有料アプリから徴収している原則30%の手数料率についても「正当な理由はない」と批判していた。アップルは今回の合意で手数料率については見直さなかったが、21年1月に始めた中小事業者向けに手数料率を15%に半減する取り組みを少なくとも3年間続けることを約束した。
アップルはセキュリティー上の懸念などを理由に年間約100万件の新規アプリの配信を拒んでおり、一部のアプリ開発者からは審査手続きが不透明だとの声も上がっている。今回の訴訟の原告側とはアプリ審査に関する統計的な情報を開示することでも合意した。
今回の合意は裁判所の承認を経て正式に決定する。アップルでアップストア事業を統括するフェローのフィル・シラー氏は26日付の声明で「合意に至るまで協力してくれた開発者らに感謝する」と述べた。原告側は26日付の裁判所への提出資料の中で和解案に同意する考えを示した。
アップルのアプリ配信サービスをめぐっては、人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズも配信や課金などの仕組みが「反競争的だ」として別の訴えを起こしている。欧米ではアップルに対しiPhone上などのアプリ配信市場を外部企業に開放するよう迫る法案作りも進んでいる。アップルは開発者に譲歩する姿勢を示すことで、規制強化をかわす狙いとみられる。