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新変異型で世界株安 市場、経済正常化シナリオ修正も

【ニューヨーク=宮本岳則】新型コロナウイルス変異型の脅威が世界の金融市場を揺さぶった。26日の米株式市場ではアジア・欧州株安の流れを引き継ぎ、ダウ工業株30種平均が今年最大の下げ幅を記録した。一方、安全資産の米国債に買いが集まり、米長期金利は2020年3月以来の低下幅となった。投資家は突如として経済正常化と米利上げシナリオの再検討を迫られている。

感謝祭の祝日明けだった26日の米株式市場は、朝方から売り先行で始まった。アジア・欧州株安の流れを引き継ぎ、ダウ平均の下げ幅は一時、1000ドルを超えた。終値は前営業日に比べて905ドル04セント(2.5%)安い3万4899ドル34セントだった。新変異型の感染拡大で経済正常化が遅れるとの懸念から、景気動向に業績が左右されやすいエネルギー株や金融株の下げが目立った。

リスク回避の動きは様々な市場に波及した。原油価格の国際的な指標であるニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は一時1バレル67ドル台まで急落した。70ドルを下回るのは約2カ月ぶりだ。前日から休暇をとっていた市場関係者が多いとみられ、価格は一方向に動きやすかった。

投資マネーは「質への逃避」に動いた。株式や原油、暗号資産(仮想通貨)などリスク資産が軒並み売られるなか、安全資産とされる米国債には買いが殺到した。長期金利の指標となる米10年国債利回りは26日、1.48%台まで低下(債券価格は上昇)した。下げ幅は20年3月以来の大きさだ。米国では当時、新型コロナの感染急拡大が始まり、市場は混乱に陥っていた。

投資家は南アフリカで見つかった新型コロナ変異型の影響を見極めようとしている。世界保健機関(WHO)は26日、最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」に分類し、「オミクロン型」と名付けた。米ゴールドマン・サックスは同日のメモで「投資家は、パンデミック(感染大流行)終結の判断を早まったのではないか、との疑問に直面している」と述べた。

投資家は経済再開と企業業績の回復を見越して、リスク資産に資金を振り向けてきた。米バンク・オブ・アメリカによると、株式ファンドへの資金流入額は年初から8930億ドル(約101兆円)に達し、年間で過去最高ペースだ。米国では株高継続を前提とした金融派生商品(オプション)売買が活況だった。投機マネーで株価が底上げされていただけに、リスク回避時の下げ幅は大きくなりやすい。

これまで市場の話題の中心は、インフレの行方と中央銀行の動向だった。米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を巡っては、量的緩和の縮小(テーパリング)加速と、利上げ前倒し観測が広まっていた。金利先物から金融政策の先行きを予想する「Fedウオッチ」によると、FRBが22年末までに3回以上の利上げに動く確率は、24日時点で67%に達していた。

新変異型の出現は投資家に「利上げシナリオ」の再検討を迫っている。26日の債券市場では金融政策の影響を受けやすい2年債利回りの低下が目立った。Fedウオッチによると「22年末までに3回以上の利上げ」の確率が一時、14.5%に低下した。逆に「1~2回の利上げ」確率が61%まで上昇した。

米ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのクロスアセット・マクロ・ストラテジスト、チャーリー・マケリゴット氏は「(新変異型の影響が広がれば)22年中に2.5回、あるいは3回の利上げはあり得ない、と市場は認識した」と指摘する。サプライチェーン(供給網)問題の長期化や経済成長の鈍化は、利上げ先送りの理由になりかねないからだ。

米ブルームバーグ通信によると、英イングランド銀行(中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は26日の講演で新変異型の影響に言及し、「もし金融市場で混乱が生じたり、パンデミックで街が閉鎖されたりした場合、我々の見方が変わるイベントになる」と述べた。同日の金融市場では、イングランド銀が12月の会合で利上げに踏み切るとの予想がやや後退した。

米国では12月3日に米雇用統計の発表を控える。雇用の順調な回復が確認できれば、テーパリング加速論が勢いづく可能性があった。ところがコロナの新変異型という新たな「変数」が加わり、市場参加者は金融政策や相場の先行きを読みにくくなった。株価の予想変動率を示すVIX指数が28台まで上昇し、3月以来の高い水準をつけた。VIXの急上昇は投資家の先行き警戒感を映す。

もっとも株高局面で買い遅れていた投資家も多い。米インスティネットの株式トレーダー、フランク・カッペレリ氏は米株について「過去7週間にわたる上昇で(株安の衝撃を和らげる)クッションを築いているため、4~5%程度の下げだけでは、長期トレンドを変えることにはならない」と予想する。投資家が休暇から戻る週明けの相場に注目が集まる。

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