米メディア、人員削減相次ぐ 広告市場縮小に備え

【ニューヨーク=清水石珠実】景気後退懸念による人員削減の波が米国のメディア業界にも波及している。英メディア業界専門サイト、プレス・ガゼットによると、米国と英国のニュース・報道系のメディアが2023年に入り公表したリストラ計画は27日時点で合計1000人を超えた。主な収入源である広告市場の縮小をにらんで、雇用を調整する動きが広がっている。

米新聞大手ワシントン・ポストは24日、全従業員の約1%にあたる20人の編集部員を減らす計画を明らかにした。「景気動向の変化を受けて、競争力を維持するために(事業内容を)審査し、いま行動に移すことを決めた」。同紙の編集主幹サリー・バズビー氏は、社員向けメモで人員削減に踏み切る背景をこう説明した。
読者数が伸び悩んでいたテレビゲームやゲーム対戦競技「eスポーツ」を扱う面、子供向け新聞などを閉鎖する。現在求人中の30人分の職は補充せずに空席のままとする。
20日には、ニュースサイト「Vox.com」や雑誌「ニューヨーク・マガジン」などを傘下に持つ新興メディアのVoxメディアが従業員全体の約7%を削減する計画を明らかにした。米報道によると、約130人の従業員に影響が出る。米経済メディアのダウ・ジョーンズは事業の見直しを通じて、小規模な人員削減を実施する計画だ。
世界的な景気後退への懸念から、企業は広告費を絞る動きに出ている。米広告大手インターパブリック・グループ傘下の広告リサーチ会社マグナによると、23年の米国の広告市場は前年比3.7%増にとどまる見通しだ。伸び率は22年の水準(8%増)から大幅に減速する。
メディア企業は収入の縮小に備えて、不採算事業を洗い出し、雇用を調整せざるを得ない状況にある。
米民間雇用調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、ニュース・報道系メディアの人員削減数は22年に1800人強と、21年の水準より2割多かった。広告収入の減少に加え、読者や視聴者の伸び悩みに直面する各社への逆風は強い。