/

市場、インフレ警戒 FRB「物価上昇には時間」

市場はパウエル議長の緩和継続姿勢に懐疑的になりつつある=ロイター

世界の金融市場で緩和頼みの構図が揺らぎ始めた。新型コロナウイルスの感染者数に減少傾向がみられ、先進国では今年半ばごろから急速に景気回復やインフレが進むとの見方が台頭する。年内に資産購入の減額を議論するとの観測が市場では増え、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の緩和継続姿勢に懐疑的になりつつある。

市場の相場観を大きく変えた一因がコロナの感染動向の変化だ。COVIDトラッキングプロジェクトによると、米国では1月上旬に1日あたりの感染者数が25万人程度と過去最悪となったが、足元はピークの3分の1程度だ。全米でレストランなど営業規制が次々と緩和され、投資家はポストコロナを見据え始めた。

バイデン米政権はこうした環境下でも1.9兆㌦の巨額のコロナ対策の成立を目指す。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は「景気過熱をもたらす」と警戒する。

焦点はインフレだ。FRBは政策目標を修正して「インフレ率が2%を緩やかに上回る状態が見通せるまで、ゼロ金利政策を解除しない」と表明している。パウエル議長は23~24日の議会証言でも「物価上昇が長続きするとは予想しておらず、物価目標の達成には3年以上かかるかもしれない」と2023年までゼロ金利を続ける想定を改めて強調した。

米商務省が26日発表した1月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.5%上昇した。伸び率は20年12月より0.2㌽高まり、20年2月以来の高水準となった。今後、経済対策や行動規制の緩和が進めば、インフレが一段と進むとみられている。

米債券市場が見込む今後5年の物価上昇率は年率で2.34%に達した。2カ月前と比べ、0.67㌽も上昇している。物価上昇と雇用回復が進み、22年終盤~23年半ばに利上げに乗り出すのではとの予想が台頭して金利上昇につながっている。

FRBにとっては13年の「テーパー・タントラム」が苦い経験として残る。当時のバーナンキ議長が量的緩和の縮小を示唆したところ、金利は急上昇し、株価は急落。地ならしのはずの発言が、むしろ緩和縮小を遠のかせ、実体経済にも打撃を与えかねない事態となった。

経済やコロナの不確実性が高い中で、市場の混乱を招くと景気回復の道筋を閉ざしかねない。パウエル議長は緩和修正をにおわせる発言は徹底して封印している。議会証言では21年の成長率見通しを引き上げる可能性を示唆するなど、景気回復の手応えを感じつつも、楽観論を語って緩和修正の思惑を駆り立てぬよう、難しい対話を迫られている。

日銀も景気と物価の先行きに慎重な姿勢を崩していない。黒田東彦総裁は18日の菅義偉首相との会談後に「金融緩和を相当長く続ける必要がある」との見方を重ねて示した。

3月の金融政策決定会合では現行政策の点検結果を示し、緩和の持続力を高めるような修正を加える。長期金利を0%程度に誘導する政策について、現状でプラスマイナス0.2%程度としている変動幅を広げる案が出ている。こうした変更を先取りする形で、日本の長期金利も上昇している。26日には一時0.175%と日銀がマイナス金利政策の導入を決めた16年1月以来、5年1カ月ぶりの高水準を付けた。

海外金利と連動した一定の金利上昇は日銀も黙認する構えだが、上昇が急だと景気回復の重荷になりかねず、国債購入を増やして抑えこみにかかる可能性もある。日銀がどこまで金利上昇を許容するかを市場は見極めようとしている。

日本株相場を支えてきた日銀の上場投資信託(ETF)購入にも変化がみられる。2月は午前の取引で株式相場が大きく下げた場合でもETF買いを見送る日が目立った。政策点検では、株高局面でETF購入を抑え、急落時に買い増す余地を残しておく方向性を打ち出すとみられ、政策修正を織り込ませる動きといえる。ただ、株価が急落した26日は約1カ月ぶりにETF購入に動き、市場の不安定な動きに神経をとがらせる。日銀がETFの購入抑制につながる手を打てるか、不透明感も漂う。

昨年春以降の株高は超低金利が長引くことが前提だった。株価は理論的には企業の将来の利益を織り込んで算出する。将来の利益を現在の価値に見直す際に金利を使う。金利が下がれば理論株価は上がり、金利が上がれば株価は下がる。

一時1.6%台に上昇した米10年債の利回りは、米主要500社の配当利回り(1.5%)を上回った。株式の投資妙味は薄まり、マネーはリスク資産への投資に向かいづらくなっている。年金基金などの機関投資家は株式と債券の比率を一定に保つ運用方針を掲げる。金利上昇(債券価格の下落)で相対的に上がった株式の比率を落とす目的で株を売る必要が生じるケースもある。

多くの新興国が抱えるドル建ての債務は、米金利が上がれば負担が増す。ドル高による債務膨張など、新興国経済の成長鈍化が世界の株式市場の懸念になることもある。

(ニューヨーク=後藤達也、斉藤雄太、佐伯遼)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン