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FacebookにApple規制の重圧 「包囲網」は世界に拡大

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【シリコンバレー=奥平和行】米フェイスブックの経営への重圧が増している。米アップルがプライバシー保護を強化したことに伴い主力の広告事業の成長が鈍化し、元社員の内部告発に端を発する企業体質への批判は米国外に広がり始めた。成長シナリオに黄信号がともりかねない。フェイスブックへの批判がさらに高まり各国で規制強化の動きが加速すれば、日本のルール整備にも影響を与える可能性がある。

「数ある逆風の中でも影響が最大だったのはアップルが提供を始めたiOS14だ」。フェイスブックが2021年7~9月期の決算を発表した25日、シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)はこう説明した。同四半期の売上高は前年同期比35%増の290億1000万ドル(約3兆3000億円)となり、市場予想の295億7000万ドルを下回った。

サプライチェーン(供給網)の混乱が広告市場に影を落とし、アップルがiPhoneなどの基本ソフト(OS)を刷新した影響も広がった。端末ごとに割り振った識別情報の利用を事前承認制に変え、広告会社などの使用を制限。アプリを横断した利用者の行動履歴の捕捉が困難になり、フェイスブックも個人の嗜好に合わせた広告配信が難しくなった。

同社は個人が分からないように匿名化した情報を使うなどして広告配信の精度を維持する取り組みを進め「やがて逆風の影響を軽減できるようになる」(マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者=CEO)という。他社よりは影響が軽微との指摘はあるものの、年末商戦で広告への需要が膨らむ10~12月期も収益の重荷になるという。

元社員であるフランシス・ホーゲン氏の内部告発の余波も広がっている。25日には米国に続いて英国の議会の公聴会にも出席して証言し、フェイスブックが攻撃的な書き込みなどの制限を怠り「ヘイト(憎悪)を助長している」と非難した。11月にはポルトガルで開くテクノロジー関連の会議にも参加する予定だ。

同氏は21年5月に退職する際に大量の社内文書を持ち出し、米ウォール・ストリート・ジャーナルに提供した。9月半ばから同紙が企業体質や管理体制の不備を指摘する記事を掲載してきたが、AP通信やCNNなどの米主要メディアも提供を受けた文書を共同で分析する異例の取り組みを始めた。25日に本格的に記事の掲載を始め、1日で40本を上回った。

「都合のいいところを抜き出している」。ザッカーバーグ氏は同日、一連の報道を否定して反発した。沈静化に躍起だが、ホーゲン氏はIT(情報技術)大手に批判的な米著名起業家などの支援も受けて追及を続ける構えだ。足元ではインドやベトナムにおける疑惑も浮上し、米国外でも同社への批判が広がりかねない情勢だ。

米国では18年、フェイスブックが保有する大量の個人情報が米大統領選などで不正に使われた問題が発覚し、同社は強い批判を浴びた。この事件を契機に連邦政府レベルのプライバシー保護法の制定や、SNSの運営企業に投稿管理でより重い責任を求める法改正の機運が高まったものの実現していない。

「包囲網」の行方は見通しづらいが、米マイクロソフトで長年にわたって法務や渉外を担当してきたブラッド・スミス社長は「多くの政府が規制強化で話し合い、協調する場面が増えている」と指摘する。フェイスブックへの批判がさらに高まれば、米国だけでなく、日本を含めた各国で規制強化の動きが加速する可能性がある。

「現在は(ルールがないために)個別企業が多くの判断を下さざるを得ず、正しい姿とは思っていない」。ザッカーバーグ氏はこう繰り返し、規制を明確にすることを求めてきた。背景には規制が曖昧なために多くの判断を求められ、社会からの批判につながっているとの思いがある。ただ逆風が強まるなか、規制を巡る議論が思惑通りに進む保証はない。

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