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中国、中米諸国に台湾断交迫る ホンジュラスに照準 

【メキシコシティ=清水孝輔、台北=中村裕】中国がカリブ海・中米諸国に台湾との断交を迫っている。次の標的は11月28日に大統領選を予定するホンジュラスだ。世界で台湾を国家承認する15カ国のうち8カ国がこの地域に集まる。中国は2022年、北京冬季五輪、共産党大会という重要行事を控え、軍事だけでなく外交でも台湾への圧力を強める。米欧は警戒している。

ホンジュラス大統領選で最有力候補に浮上した最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、当選した場合「即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と繰り返す。ホンジュラスは台湾と外交関係を維持しているが、カストロ氏は中国に乗り換える方針だ。

大統領選は当初、首都の市長で与党・国民党のナスリー・アスフラ氏が先行し、テレビ司会者のサルバドル・ナスララ氏、カストロ氏が追う構図だとされた。だが、ナスララ氏が出馬を取りやめてカストロ氏を支持すると表明し、同氏とアスフラ氏の一騎打ちの様相になった。

ホンジュラスの民間団体CESPADの直近の世論調査で支持率は、カストロ氏が38%に伸び、アスフラ氏の21%を引き離した。

断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示した。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えた。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆した。

中国外務省の汪文斌副報道局長は9月の記者会見でホンジュラス大統領選を念頭に「台湾は中国と不可分だ。(ホンジュラスなどと関係を強めても)台湾独立の動きは必ず行き詰まる」と主張した。当時はカストロ氏の勢いが弱かった。

台湾が警戒するのは、中国が「台湾独立派」とみなす蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任した16年以降、カリブ海・中米諸国への影響力を強めているからだ。17年にパナマ、18年にはエルサルバドル、ドミニカ共和国がそれぞれ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。

中国の武器はインフラ建設を含む経済支援だ。最近では新型コロナウイルスのワクチン提供を加え、この地域の国々に食い込んでいる。

中国の企業連合は18年、15億ドル(約1700億円)でパナマ運河にかかる4本目の橋の建設案件を落札した。中国はパナマに新型コロナ対策として20年2月~6月、ヘルスケア関連として計200万ドルの支援を実施した。

中国は19年、エルサルバドルに対し、競技場、国立図書館などの建設に計5億ドルを投じると約束した。今後、左派の独裁政権のニカラグア、大統領が暗殺されたハイチなど、経済や政情が安定しない国に台湾との断交を働きかける可能性がある。

これに対し、台湾は「資金力で中国に勝ち目がないとみている」(外交関係者)といわれる。18年には台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が「ドル外交はしない」と明言した。中国のように、多額の経済支援を相手国に約束して外交関係を維持する手法はとらない、というわけだ。

台湾は2月、中国と国交のある南米のガイアナに代表機構「台湾事務所」を設立すると発表した。ガイアナは当時、中国と距離を置き始めていた。だが、発表の翌日、ガイアナ外務省は「台湾といかなる外交関係もない。(台湾事務所の設立は)誤解だ」と説明し、事務所の開設計画を撤回した。中国の「台湾封じ込め」は徹底している。

窮地の台湾を側面支援するのは米国だ。7月にホンジュラスを含む中南米諸国へワクチンの追加提供を決めた。10月にはワクチン供給の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、ニカラグアにも約30万本分のワクチンを提供した。

ワクチンを製造する中国はこの地域で外交関係のある国に積極提供した。だが、台湾はワクチンを十分に確保できず、台湾を承認する国は不満を募らせていた。

カリブ海・中南米諸国は米国の「裏庭」と呼ばれ、同国のサプライチェーン(供給網)や安全保障を確保するうえで地政学上の要衝といえる。米国のトランプ前政権は明確に軽視したが、バイデン政権はこれを改め、ブリンケン国務長官らを派遣してきた。

米ローズ・カレッジのチェンカイ・チェン准教授は「中国が今後、中南米で台湾承認国の多くを切り崩していけば、米国にも大きな打撃だ」と指摘する。

米国と近い欧州諸国にとっても国際社会における中国の勢力拡大と台湾の後退は食い止めたい流れだ。台湾外交部の呉氏は最近、ほぼ2年半ぶりに欧州諸国を歴訪した。欧州側からもフランス議員団が10月に台湾を訪れ、関係強化を試みた。

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