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米軍制服組トップにブラウン氏、30年ぶり黒人 中国対処

(更新)

【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は25日、米軍制服組トップの次期統合参謀本部議長にチャールズ・ブラウン空軍参謀総長を指名した。黒人の起用は30年ぶりで史上2人目。インド太平洋地域に精通し、中国への対処を進める。

統合参謀本部議長は大統領の軍事アドバイザーを担い、各国との防衛協力に深く関わる。就任に議会上院の承認が必要になる。現職のマーク・ミリー氏は9月に任期切れを迎える。

バイデン氏は25日、ホワイトハウスでブラウン氏の指名を発表し「ブラウン大将は2番手に甘んじない。勝利するために動く」と指摘。「こうした姿勢はこれから数年間の課題に対処するうえで最高司令官である私と米国にとって重要な資産だ」と強調した。

ブラウン氏の起用はバイデン政権が進めるインド太平洋重視を反映する。韓国に駐留経験がある。18〜20年にハワイを拠点に太平洋空軍司令官を務め、インド太平洋地域で航空部隊の運用を統括した。米中競争が激しさを増した時期と重なる。

20年に空軍参謀総長へ転じると直後に「変革を加速せよ、さもなければ敗北する」と題する文書を発表。安全保障関係者の間で衝撃が広がった。

「過去の成功は将来の成果を保証しない。変革しなければ我々が想定する強みは失われ続け、空軍は厳しい環境での戦闘における課題に適切な準備を整えられなくなる」と言明した。中国やロシアの台頭に強い危機感をあらわにするものだ。

具体的には「機敏な戦闘展開」と呼ばれる作戦構想を推進した。航空機運用に滑走路を必要とする空軍は大規模な基地に戦力を集中させるケースが目立った。新構想は小規模の航空部隊を多数の拠点に機動展開させて、敵国に攻撃対象を絞らせない効果を狙う。精密攻撃能力を向上させる中国に対抗する。

バイデン氏は人種の多様性にも配慮した。統合参謀本部議長への黒人起用は1989〜93年に務めた故コリン・パウエル氏以来。現在は国防長官に黒人のオースティン氏が就いている。ブラウン氏が承認されれば、初めて国防長官と統合参謀本部議長を同時に黒人が務める。

米軍は約4割をマイノリティーが占める。米社会の分断が進むなか、米軍で人種間の対立が表面化すれば団結力や即応力の低下につながるとの危機感は強い。

2020年5月に中西部ミネソタ州で白人警官による黒人暴行死事件が起きて抗議デモが全米に広がると、当時のトランプ大統領は鎮圧に向けて米軍動員を一時検討した。人種間の平等を訴えるデモへの動員検討は、米軍内で人種間の対立を生みかねないと懸念が強まった。

ブラウン氏は事件直後にツイッターで約5分間の動画を公開した。「他人が無意識で私に投げかけた思いやりのない言葉のことを考えている」と語り、米軍内で人種差別を受けた過去を打ち明けた。

「個人として、プロフェッショナルとして、統治機構としてどうやったら改善できるかを考えている」と話し、人種問題に取り組む姿勢を強調した。

バイデン氏は25日、この動画に触れて「米兵だけでなく、全米の米国人の琴線に触れるものだった」と振り返った。25日は黒人暴行死事件から3年の節目にあたる。

ブラウン氏を知る関係者によると、寡黙でおとなしい性格で聞き役に回ることが多い。反応が薄いため、話を楽しんでいるのかわかりにくいことがあるという。

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