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バイデン氏、独ロに歩み寄り ガス管計画を容認

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バイデン米大統領(左)はロシアとの核軍縮で協調したい考えだ(2011年3月、モスクワでロシアのプーチン大統領と握手するバイデン氏)=AP

【ワシントン=中村亮、ベルリン=石川潤】米ロ両政府は25日、首脳会談を6月16日にスイスのジュネーブで開くと発表した。バイデン米大統領はトランプ前政権が強く反対してきたロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン計画の完了を容認する立場を表明。欧州の要であるドイツとの関係改善にも手を打った。

サキ米大統領報道官は25日の記者会見で「首脳会談の前提条件はない」と述べた。会談では「戦略的安定性に多くの時間を割く」と説明し、核軍縮での協調に意欲を示した。

米ロは2月、新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長に合意。軍縮推進は双方の利益になるとの認識がある。今後は条約に参加していない中国の扱いに加え、条約の対象外である短・中距離の核戦力をどのように制限していくかが焦点になる。

ロシアと同盟関係にあるベラルーシは民間機を強制着陸させて米欧から強い批判を浴びたが、米政権はロシアとの対話を通じて解決を目指す構えだ。

バイデン氏は25日、米首都ワシントンで記者団に対し、バルト海を通って独ロを直接結ぶ全長1200キロメートルのガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」について「制裁は欧州との関係を考えると非生産的だ」と述べた。計画は欧州のエネルギー安全保障に対して望ましくないとの主張は変えないが、米独関係の改善に向けて計画完了はやむを得ないとの考えを示す発言だ。バイデン政権はすでに計画の約95%が完成したと説明する。

米政権は対ロシアとともにドイツとの関係の改善に向けて、建設を推進してきたメルケル独首相の顔を立てた格好だ。米政権は19日、計画の事業会社やその最高経営責任者(CEO)への制裁発動を見送っていた。

バイデン氏の方針はトランプ前政権からの転換を意味する。トランプ政権はノルドストリーム2を通じて「ドイツがロシアの捕虜になる」と指摘。ドイツがガス購入でロシアに巨額の資金を払うにもかかわらず、米国がドイツをロシアから防衛するのは不公平だと主張した。防衛義務を履行しない考えを示唆し、米独関係の悪化を臆せずに計画の見直しを公然と迫った。

脱原発、脱石炭を進めるドイツは、天然ガスの安定調達につながるパイプライン計画は不可欠と主張してきた。9月には連邦議会(下院)選挙を控え、選挙後にはノルドストリーム2の建設に反対する緑の党が政権入りする可能性が高い。秋に政界を引退するメルケル首相の在任中に何とか道筋を付けたいという思惑もあった。

最大の懸案だったパイプライン計画が解決に向かえば、米独関係は改善に向けて大きく前進する。ただ、ロシアを安全保障上の脅威とみるウクライナやバルト諸国などは計画に強く反発しており、こうした国々の懸念をどう払拭していくかも中東欧の安定に向けたカギとなる。

米ジョージタウン大のアンゲラ・ステント教授はバイデン政権の対ロ接近について「中国をより大きな課題と認識していることの表れだ」とみる。ロシアの挑発行動を抑止し中国との対抗に注力すべきだとの戦略的判断が背後にあるとの分析だ。バイデン氏は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に対面形式での会談を提案しておらず、ロシアとの関係構築を優先しているのは明白だ。

米国の対ロ接近に反対論は絶えない。北大西洋条約機構(NATO)関係者はノルドストリーム2への制裁見送りについて「ロシア接近に向けた譲歩だ」とみる。米アトランティック・カウンシルのイアン・ブルゼズィンスキー上級研究員も「プーチン氏は私腹を肥やし、地政学的な野心を追求していく」と分析する。ロシアへの弱腰姿勢は中長期的にロシアの挑発行動を招くと警鐘を鳴らす。

バイデン氏は大統領としての初外遊で、6月11~13日に英国で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)、同14日にベルギーで開くNATO首脳会議にそれぞれ出席する。米欧同盟の復活をアピールする狙いだが、対ロ政策をめぐり結束を示せるかどうかがカギになる。

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