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米長期金利一時1.61% 株価大幅安、各国で警戒広がる

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【ニューヨーク=大島有美子】25日の米債券市場で10年物国債利回りが一時1.61%に急上昇した。前日より0.23%高く、1年ぶりの高水準となる。金利上昇を受け株式市場では割高感が意識されやすいハイテク銘柄を中心に売られ、ナスダック総合株価指数は4%近く下落した。金利上昇や株安は欧州などにも波及し、各国で相場変動への警戒が広がっている。

新型コロナウイルスの感染減少と追加経済対策による景気浮揚への意識が強まり、長期金利は2月に入って上昇が加速した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23~24日の議会証言で足元の金利上昇について「経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ」と指摘し、特に警戒感を示さなかった。

パウエル議長は長期の金融緩和方針を改めて強調した一方、市場では利上げの前倒し観測も出ている。市場関係者の多くは10年債の利回りで2021年末までに1.50%程度に到達するとみてきた。景気回復に伴う緩やかな金利上昇を想定する向きが多かったが、急ピッチな上げで警戒感が高まりリスク資産を圧縮する動きが広がった。

バンク・オブ・アメリカは景気見通しの改善にともない、1カ月前から予想を引き上げ、21年末の10年債利回りで1.75%を見込む。調査会社ヤルデニ・リサーチは「21年末より前に2%に到達しそうだ。22年はさらに上がるだろう」(エドワード・ヤルデニ氏)と予想する。

25日の債券市場は多くの年限で利回りが上昇したが、特に目立ったのが5年債の上昇だ。一時は前日より0.24%高い0.86%まで上昇し、20年3月以来の高水準となった。10年債と比べて年限が短いため政策金利見通しの影響を受けやすい。金利の急変動でリスク管理に伴う売りも膨らんだ。同日実施された7年物国債の入札不調が伝わったことも、長期金利の上昇につながった。

FRBは23年まで政策金利をゼロ近辺に据え置く施策を維持するとしている。ただ今春以降にインフレが加速する可能性も受け、市場はFRBによる資産購入の縮小に向けた議論のみならず、利上げの前倒しを織り込み始めている。

米長期金利の上昇は欧州やアジアでも金利上昇を招いており、中央銀行も警戒を強める。欧州中央銀行(ECB)チーフエコノミストのフィリップ・レーン氏は25日、「長期金利の変化を注視している」とした上で、国債購入が「パンデミック(世界的大流行)を乗り越えるためにふさわしい金融環境を保つために実施される」と述べ、国債の購入ペースの拡大を示唆した。

株式相場も大きく下落した。ハイテク株の多いナスダック指数は前日比で3.5%下落した。下落率は20年10月28日(3.7%)以来、4カ月ぶりの大きさとなる。取引時間中には下落率が4%を超える場面もあった。金利急上昇を受け、20年に大きく買われた高PER(株価収益率)の銘柄を中心に下げが目立った。

ダウ工業株30種平均も前日比で560ドル(1.8%)下げて3万1402ドルで終えた。アップルは3.5%安、マイクロソフトは2.4%安となるなどIT(情報技術)株のほか、電気自動車のテスラ(8.1%安)も売られた。英独仏など欧州市場では米金利上昇を受けて、引けにかけて主要株価指数が軒並み下げた。

リスク回避の姿勢は市場が織り込む株式相場の変動率「VIX」(恐怖指数)にも表れた。一時、前日より40%強高い31台に上昇し、約1カ月ぶりの高水準をつけた。

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