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米南部の大寒波、電力信用危機に 自由化の安全弁課題

(更新)

【ニューヨーク=宮本岳則】米南部を襲った記録的な大寒波が、電力取引市場の信用危機に発展した。テキサス州で卸取引市場を運営する系統運用機関は24日、一部の電力小売業者が電力卸売価格の高騰でデフォルト(債務不履行)状態に陥ったと明かした。日本でも想定外の価格高騰による新電力の経営難が起きており、不測の事態に備えた電力網の安全弁づくりが課題となる。

テキサス州は全米で最も電力自由化の進んだ地域の一つ。電力小売事業者は発電会社や電力取引市場から電気を調達し、家庭や企業などに販売している。送配電網を管理するのが系統運用機関のテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)だ。同評議会が卸取引市場を運営し、電力の需給調整も担う。2月中旬の大寒波でこの取引システムが試練を迎えている。

寒波で暖房利用が増え、発電設備も一部停止したことで、電力卸売価格が一時、1メガワット時あたり9000ドルと通常の100倍以上に跳ね上がった。小売事業者は購入代金の確実な決済のためERCOTに担保金を差し出す仕組みだが、価格高騰で要求担保額が急増した。一部小売事業者は担保資金を調達できず、デフォルト状態となった。

ERCOTは24日、緊急会議を開いた。担当幹部の1人は今後2~3日で小売事業者に要求する担保金がさらに増加し、デフォルトが増える可能性に言及した。小売事業者から担保金を回収できなかった場合、発電会社や他の小売事業者などすべての取引参加者から徴収する。最終的には家庭や企業の電力料金に転嫁されるとみられる。

格付け大手フィッチ・レーティングスは24日、テキサス州の電力小売事業者を格下げ方向で信用力を見直す「ウオッチ・ネガティブ」に指定した。今後、デフォルトに陥る業者が続出すれば、発電会社は取引に慎重になり、市場機能が低下するおそれがある。ERCOT幹部は今回の事態は想定外だったと釈明した。

テキサスの大寒波は危機への備えのほころびを突いた。電力を自由化すると経済合理性から余分な発電設備を持つインセンティブが低下する。テキサス州は将来にわたる供給力を確保する仕組みが未整備で、設備投資を市場に任せている。過度な自由化が予備力の低下を招き、電力不足につながったとの指摘もある。

今回は卸取引市場の信用危機も重なり、混乱に拍車がかかった。災害などの危機に備えるため、安全弁となる予備的な発電容量をどう確保するかが課題となる。

日本の電力市場は2000年から段階的に小売り分野の自由化が進み、16年4月に全面自由化された。東京ガスやENEOSホールディングスなど異業種が新規参入し、2月時点で小売事業者は700社以上にのぼる。新電力は東京電力ホールディングスなど大手と比べ割安な電気料金などを武器に、販売電力量の約2割を占める。

足元では中小の新電力を中心に事業環境が悪化している。液化天然ガス(LNG)不足などで1月に電力需給が逼迫し、小売事業者が販売する電力を調達する日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格が高騰したからだ。

1月中旬には一時、1キロワット時150円台と、12月上旬と比べ20倍超の高値水準となった。電源構成の4割弱をガス火力に依存することや原発再稼働の遅れ、JEPXの情報開示不足などを指摘する声が出ている。

楽天モバイルは1月に電力の新規契約の受け付けを停止した。自然電力(福岡市)は20年末から2月上旬にかけ、顧客数が半減。一部の新電力は資金繰りが急速に悪化し、事業譲渡を大手電力などに打診する動きもある。

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