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米SNS公聴会、責任巡り応酬 誤情報対策や子ども保護

(更新)
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公聴会に参加するIT大手のCEO。左からピチャイ氏、ザッカーバーグ氏、ドーシー氏(写真はいずれもロイター)

【米州総局】フェイスブックなどSNS(交流サイト)を運営する米IT大手3社の経営トップに対する米議会公聴会が25日、開かれた。1月に起きた米連邦議会議事堂の占拠事件を機にSNSの管理体制に対する批判が高まっている。5時間半に及んだ公聴会では、誤情報を拡散したことへの批判や巨大プラットフォームの規制論など「SNSの責務」をめぐり議論の応酬が繰り広げられた。

公聴会は米議会下院のエネルギー・商業委員会傘下の2つの小委員会が共催した。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に加え、グーグルのスンダー・ピチャイCEO、ツイッターのジャック・ドーシーCEOがオンラインで出席。ピチャイ氏は5カ月ぶり、ザッカーバーグ、ドーシー両氏は約4カ月ぶりになる。

公聴会はスマホ中毒やいじめなど子供をSNSからどう守るかなど多岐にわたった。主なテーマや発言内容をまとめた。

テーマ①ワシントン議会占拠事件  
1月の事件ではSNSが暴徒の情報共有手段として使われたとの批判が高まった。各社がトランプ米大統領(当時)のアカウントを停止したことに対しても「運用が恣意的」といった批判が出た。

フェイスブックCEO「我々のサービスが使われたのは確か」

  民主党のシャコウスキー議員から1月の占拠事件でフェイスブックが果たした役割を認めるかと問われたザッカーバーグ氏は「確かに我々のサービス上に関連コンテンツが掲載されていた」と認めた。1月には、同社のサンドバーグ最高執行責任者が「フェイスブックではなく、小規模なSNSで計画されたものだ」と事件との関与を否定していた。

民主議員「市民の安全より利益を優先」

  民主党のマイク・ドイル議員はSNSが1月6日の連邦議会議事堂占拠事件や、新型コロナのワクチンをめぐり反対派の意見を広める役割を果たしたと指摘し「誤った情報を止める手段を持っているにもかかわらず、ユーザーや一般市民の健康・安全より自社の利益を優先させた」と批判した。

議事堂占拠事件では複数の死者も出た=AP
テーマ②誤情報対策
各社は誤情報の拡散を放置しているとの批判を浴びた経緯もあり、対応人員の強化や人工知能(AI)を使った対応などを強化している。フェイスブックのザッカーバーグCEOは事前に提出した冒頭発言要旨で「担当者を16年以降3倍に増やし、3万5000人で対応にあたっている」と説明した。

民主議員「新型コロナの偽情報拡散させた責任」

  民主党のシャコウスキー議員は大統領選に関する偽情報が1月の連邦議事堂占拠事件で複数の命が失われるまで拡散され、20年には新型コロナに関する偽情報が削除までに180万回以上再生されたと指摘。「なぜそんなに時間がかかったのか。自主規制が機能していない。偽情報や誤報が広まるのを許した責任を取らなければならない」と強調した。

フェイスブックCEO「コンテンツ監視に3万5000人」

  ザッカーバーグCEOは医療用麻薬「オピオイド」を含む鎮痛剤の中毒問題について問われ、人工知能(AI)を利用した問題投稿の検出システムの開発などに人員を割いていると説明した。また、「コンテンツの監視に3万5000人を充てている」と述べた。通信品位法230条の改正にあたり「プラットフォーム提供にこうした効果的なシステムを求めるのは合理的だ」と述べた。

議員の質問に答えるフェイスブックのザッカーバーグCEO=ロイター

グーグルCEO「新型コロナ、85万件の動画を削除」

  ピチャイCEOは誤情報対策として「2020年を通じて(新型コロナウイルス関連で)85万件のビデオを削除し、1億件近いコロナ関連広告をブロックした」と説明した。「さまざまな情報や視点の提供と同時に誤情報を排除できるのは、230条のような法的枠組みがあるからだ」と話した。

  • SNSの運営企業は1996年に成立した通信品位法230条により利用者の投稿に対する責任を原則として問われずに済む一方、削除する権利も認められてきた。この法律は米国のインターネット産業の発展に寄与したとの見方がある一方、民主党は「誤情報を放置している」と批判し、共和党も「保守派の発言を封じるのに使っている」と問題視してきた。

民主議員「巨大プラットフォーム規制へ新たな公的機関を」

  民主党のピーター・ウェルチ議員はSNSをはじめとするオンラインのプラットフォームを監督する新たな公的機関の設立を提案した。現在はIT企業が個別に行っているコンテンツ内容に応じた掲載可否の判断などを一手に担うことで、規制の効果を高められるとした。

共和議員「SNSは保守派の意見を抑え込んでいる」

  共和党のロバート・E・ラッタ議員は「230条は善意によるコンテンツの審査や遮断を認めてきたが、最近は同意できない視点の検閲などが含まれていることは明らかだ」とし、大手IT企業が保守派の意見を抑え込んでいると非難した。「表現の自由の原則に基づいてコンテンツの節度を決定していないことは非常に憂慮すべきだ」とし、IT企業の権利をめぐり230条の見直しを検討すべきだとした。

民主議員「裁判所が検証できるよう改正を」

  民主党のアンナ・エシュー議員はSNS上のターゲティング広告が、過激な動画を見た利用者に類似したコンテンツを薦めることでユーザーの思想の過激化に拍車をかけていると糾弾した。「暴力につながるアルゴリズムによる増幅の役割を裁判所が検証できるよう、230条を狭義に改正すべきだ」と述べた。

フェイスブックCEO「思慮深い改正を」

  フェイスブックのザッカーバーグCEOは「思慮深い改正」を求め、「改正によりさらによく機能するはずだ」と述べた。230条による免責が受けられる対象を「違法投稿を検知・削除する十分なシステムを備えている企業に限定する」などの私案を示し、第三者機関が備えるべきシステムの水準を定めるべきだと踏み込んだ。

ツイッターCEO「困難が伴う」

  ザッカーバーグ氏はコンテンツ管理に関する報告書を定期的に提出することを義務付けるといった通信品位法230条の改正に言及した。同氏の提案に対する賛否を問われたグーグルのピチャイCEOは「透明性や説明責任に関していい提案だ」と述べた。一方、ツイッターのドーシー氏は事業規模に応じて責任の軽重に差をつけるとの提案に対して「規模を判断するのに困難が伴う」などと指摘した。

オンラインで証言に臨むツイッターのドーシーCEO(25日)=ロイター

グーグルCEO「230条なければ投稿管理難しい」

  ピチャイCEOは事前提出した冒頭発言要旨で「230条がなければ過剰規制になるか、まったく投稿を管理できなくるかのいずれかだ」と述べ、改正に慎重な姿勢を示した。一部議員が発表した改正案も「オープンなネットの保護と有害コンテンツ対策の両立に寄与しない」と否定的な見方を示した。

フェイスブックCEO「イノベーション促進へ新興企業の負担軽減を」

  共和議員はIT企業の免責範囲がどこまで及ぶかについて人々の懸念が払拭できていないと追及。ザッカーバーグ氏は「投稿の全てに責任を持つことを企業に求めるのは不可能で、それが230条の知恵でもある」とした上で「大規模なプラットフォームに明らかな違法コンテンツに対処する仕組みを期待するのは妥当だ」と語った。一方「寮の部屋で学生が作ったような小規模なプラットフォームに対しては、イノベーションを起こして市場に参入するために規制の負担を少なくする必要がある」とし、コンテンツの監視に関する責任は企業規模に応じて限定すべきだとの考えを示した。

テーマ④問われる透明性・説明責任
各社は議会や社会から批判が強まるなか、投稿管理にまつわる透明性と説明責任を高めて対応している。ツイッターのドーシーCEOは冒頭発言要旨で、「各国の指導者の利用規約違反にどう対応するかを決めるため、幅広い利用者の意見を聞いている」などと説明した。自主的な取り組みを追認する形でのルール整備を望んでいることをにじませた。

共和議員「空約束ではなく真の変革を」

  共和党のビリラキス議員はSNSが子どもなどに与えうる悪影響に言及し「うつ病や孤立、自殺を助長するような慣習を抑えこみ、法執行機関と協力するために何をするのか」と問いただした。「空約束ではなく、真の透明性と真の変革を求める」と訴えた。

グーグルCEO「滞在時間を最優先」批判に歯切れ悪く  

ピチャイCEOはユーチューブをサイト滞在時間を伸ばすために設計しているかを問われ「それが唯一の目的ではない」と言葉を濁した。過激思想を増幅させているとの指摘がある動画の推薦システムを修正する意思があるかを問われたが、歯切れの悪い返答にとどまった。

グーグルのピチャイCEO=ロイター
テーマ⑤子供をどう保護するか
スマホ中毒やいじめなど、未発達な子供をSNSからどう守るかは米国だけでなく世界的な課題。民主、共和両党の議員から子供の保護に関する質問が相次いだ。

民主議員「子供の健康犠牲に広告収入」

  民主党のキャシー・キャスター議員は「プラットフォーム企業は脳や社会性が未発達な子どものSNS利用に見て見ぬふりをして、彼らの健康を犠牲にして広告収入を得ている」として法規制の強化を主張した。ザッカーバーグ氏は「13歳未満の子どもはインスタグラムは使えず、広告収入も得ていない」と否定した。「多くの子供が使っていることを親は知っている」と追及を受けた。

公聴会では子供の保護についても議論が熱を帯びた=ロイター

共和議員「子供に火のついたタバコを渡すようなもの」  

共和党のビル・ジョンソン議員はネット上でのいじめや過激主義、スマホ中毒などが子どもに与える影響をタバコになぞらえて「ビッグテック企業は本質的に、子どもたちに火のついたタバコを手渡し、彼らが一生タバコに夢中になることを望んでいる」と非難した。

フェイスブックCEO「子ども向けインスタ」開発認める

  フェイスブックが画像共有アプリ「インスタグラム」で13歳未満を対象とした新たな製品を開発しているとの一部報道について、ザッカーバーグ氏は「開発の初期段階」と認めた。SNSの利用が子供の孤立感や自殺の増加につながっているとの指摘に対しては「友人とのつながりを深めることにはポジティブな効果がある」と反論した。

その他のテーマ:人種差別やウクライナ疑惑

民主議員「SNSは人種差別主義者の武器」  

民主党のバターフィールド議員は「SNSが人種差別主義者の武器となり、社会的運動を弱体化させ、有色人種のコミュニティでの投票を抑制し、人種差別的なコンテンツや嘘を広めるために利用されていることを認識すべきだ」と述べた。テック企業に従業員の多様性の確保を義務付ける必要があるとした。

民主議員「『中国ウイルス』野放しで反アジア感情」  

SNS上での人種差別を懸念する民主党のマツイ議員は各社トップに対し、「憎しみの拡散を防ぐために十分な努力をしていないのではないか」と訴えた。SNS各社が「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」といったハッシュタグの利用を禁じていないことが反アジア的な感情の増幅を許し、アジア人をターゲットとするヘイトクライム(憎悪犯罪)の増加にもつながっていると主張した。

ツイッターCEO「完全なミスを犯した」

  米大統領選の最中だった20年10月にバイデン氏のウクライナ疑惑を伝えた米紙ニューヨーク・ポストのアカウントを約2週間凍結した問題について、ツイッターのドーシーCEOは「我々の解釈が間違っていた。完全なミスを犯した」と改めて自社の過ちを認めた。当初はハッキングによって違法に入手された情報の拡散を禁じる規約に違反するとしていたが、その後、同社はハッカーなどから直接共有された場合でない限り削除対象としない方針に改めた。

グーグルCEO「当社出身者、2000社を新設」

  グーグルのスンダー・ピチャイCEOは独占や寡占について問われ「当社は事業展開している多くの市場で競争している」と答えた。製品検索でのアマゾン・ドット・コムの台頭や、スマートフォン、企業向けソフトウエアでの他社との競争を挙げた。「グーグル出身者が過去15年間で2000社以上の会社を立ち上げている」とし、テクノロジー産業の活性化に貢献しているとの姿勢を示した。

(奥平和行、鳳山太成、白石武志、佐藤浩実、白岩ひおなが担当しました)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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