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米国務長官、イスラエル首相と会談 協調演出も透ける溝

(更新)
イスラエルのネタニヤフ首相㊨と会談したブリンケン米国務長官(25日、エルサレム)=ロイター

【ワシントン=中村亮、カイロ=久門武史】ブリンケン米国務長官は25日、イスラエルを訪れネタニヤフ首相と会談した。バイデン政権発足後、ぎくしゃくしていた同国との関係の改善につなげる狙いで、ネタニヤフ氏との協調をアピールした。ただ、イスラエルの対米依存度は以前よりも下がっており、米国の求心力も弱まっている。米議会では与党・民主党からもイスラエルへの批判が出ており、関係修復の困難さは増している。

ネタニヤフ氏は会談後の共同記者会見で「我々は平和と安全、繁栄への目標を共有している」と言明。ブリンケン氏は「イスラエルの安全保障に対する米国の関与を示すために来た」と応じ、協調を演出した。

同氏はイスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの間で発効した停戦の順守の必要性も訴えた。衝突の再発を避けるための取り組みは「ガザの人道危機への対処から始まる」と強調。ガザの復興支援に取り組む考えを示した。ネタニヤフ氏はハマスが停戦を破った場合「イスラエルの反応は非常に力強いものになる」と警告した。

ブリンケン氏は続いてヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラを訪れ、自治政府のアッバス議長と会談した。ロイター通信によると、ブリンケン氏は会談後、荒廃したガザへの緊急支援として550万ドル(約6億円)を拠出すると表明した。パレスチナに対しては7500万ドルの経済支援を実施する方向で米議会と調整する考えも示した。

米国はハマスをテロ組織と認定しており、自治政府をパレスチナの対話相手としている。バイデン政権はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を支持しており、中東和平への関与をアピールする考えだ。

今回のブリンケン氏の中東訪問の目的の一つはイスラエルとの関係修復だった。バイデン大統領は24日の声明で、ブリンケン氏のイスラエル訪問を通じて「安全保障に対する米国の鉄壁の責務」を確認すると説明していた。

ただ、バイデン政権はトランプ前政権時に離脱したイラン核合意への復帰を中東政策の柱と位置づけている。米国とイランは週内に核合意をめぐる間接協議を再開する見通しだが、イスラエルは米国の復帰に一貫して反対してきた。

米・イスラエル関係がすでにぎくしゃくするなかで米国が核合意へ復帰すれば対立に拍車がかかる恐れがあり、ブリンケン氏は会談でイスラエル側に米側の立場への理解を求めたとみられる。ただ、ネタニヤフ氏は記者会見で「イスラエルは大量破壊兵器を持とうとする体制に対し常に自衛権を持つ」と述べ、米国の核合意復帰に反対の姿勢を崩さなかった。

両国間に隙間風が吹くのは、バイデン政権がトランプ前政権のイスラエル寄りの外交政策を変更したことだけが理由ではない。イスラエルの経済や軍事面での米国への依存度が低下してきたことも影響している。

イスラエルは技術主導型の新興企業が成長のけん引役となり、国内総生産(GDP)は過去20年で3倍になった。1人当たりGDPは日本と肩を並べるようになり、米国からの経済支援の比重は小さくなった。

軍事面でも対空防衛システム「アイアンドーム」など自前の兵器開発に力を入れ、自立を進める。最新鋭ステルス戦闘機「F35」など米国から輸入する装備は多いが、かつてほど米国に頼り切る構図ではなくなった。国際的な孤立感が薄れてきたこともこの流れに拍車をかける。イスラエルはアフリカやアジアで外交関係を広げ、長く対立してきたアラブ諸国でも昨年4カ国と国交を樹立した。

イスラエルへの抑えがきかなくなる中、米議会では政権のイスラエル政策への批判が相次いでいる。民主党系のバーニー・サンダース上院議員は23日の米メディアのインタビューで「ガザにいる子どもたちを殺すために武器を供給すべきではない」と指摘し、米国からイスラエルへの武器輸出凍結を訴えた。

一方、野党・共和党はバイデン政権に対し、イスラエル擁護の度合いが弱いという理由で一斉に批判している。共和・民主両党の政権で20年以上にわたって中東政策に携わったアーロン・ミラー氏は「対イスラエル政策をめぐり議会がここまで分断したのはいままで見たことがない」との認識を示す。

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