NY市議会、料理配達員の待遇改善 最低賃金設定へ

【ニューヨーク=山内菜穂子】ニューヨーク市議会は23日、料理宅配サービスの配達員の待遇を改善する一連の法案を可決した。配達員が請け負う仕事を選びやすくするほか、2023年までに最低賃金を設定することなどを盛り込んだ。ネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の権利保護が一段と進むとして注目を集めている。
新型コロナウイルスの感染拡大で同サービスの需要が高まる一方、料理配達員の労働環境が問題視されていた。デブラシオ市長が近く一連の法案に署名し、成立する見通しだ。
料理配達員は宅配にかかる最長距離や、橋やトンネルを走行しないことなどを自ら決定できるようになる。料理宅配サービスを手掛ける企業は配達員に1回の宅配にかかる時間やチップなどを事前に伝え、少なくとも週1回、報酬を支払う。
料理を入れる保温用のかばんを無料提供し、料理配達員が飲食店のトイレを利用できるようにすることも企業に求めている。
同市は料理配達員の最低賃金を決めるため、収入や仕事のための支出、労働条件などを調査する。23年1月までに最低賃金を設定し必要なルールを整備する。24年以降の毎年の見直し規定も盛り込んだ。

同市には6万5000人以上の料理配達員がいるとされ、その多くは移民が担っている。コーネル大と民間団体の調査によると、1時間あたりの収入はチップを含めて平均約12ドル(約1300円)で、同市の最低賃金(15ドル)を下回る水準という。
最近も9月上旬の記録的な豪雨をきっかけに、料理配達員の労働環境の改善を求める声が高まっていた。市が住民に外出を控えるように呼びかけるなか、料理配達員が浸水地域で自転車を押して料理を届ける動画がSNS(交流サイト)で拡散した。
フードデリバリー業界には逆風が続いている。同市議会は8月、企業が飲食店に請求する手数料について、上限を恒久的に設ける法案を可決した。コロナ禍で宅配サービスに頼らざるを得ない飲食店に高額な手数料を課す企業に批判が出ていた。
これに対し、米ウーバーテクノロジーズなど宅配サービスを手掛ける3社は9月、同法の施行差し止めを求めて連邦裁判所に提訴した。米メディアによると、3社は手数料の恒久的な上限規制により消費者への価格転嫁につながる可能性があるなどと主張している。
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