米、戦略物資の供給網見直し「国産」優遇 対中依存脱却 - 日本経済新聞
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米、戦略物資の供給網見直し「国産」優遇 対中依存脱却

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権は24日、戦略物資のサプライチェーン(供給網)を強化するための戦略をまとめた。政府調達で国産品を優遇し、生産の国内回帰を促す。足元のウクライナ情勢で重要部材を外国製品に頼る問題が浮き彫りになっており、有事に左右されにくい供給網の構築を目指す。

バイデン大統領が供給網見直しの大統領令に署名してから24日で1年が経過するのにあわせ、戦略の報告書を作成した。重要な戦略物資で中国など対立国への依存を減らし、国内や同盟国から安定調達できる態勢を目指すとうたった。

エネルギーや情報通信機器、医療品、軍事品など個別の6分野を検討した。例えば、米国内に設置されるシリコン太陽電池の基幹部材「セル」では、生産の75%が中国企業がベトナム、マレーシア、タイに持つ拠点に偏っているとの懸念を示した。

今後進める具体策として、政府調達で国産品を優遇する「バイ・アメリカン法」の運用を強化する。調達価格で有利になる国産品に特定の重要部材を新たに加える。ホワイトハウスの米行政管理予算局(OMB)が近く規則を公表する。

報告書では、国産品を一段と優遇することで「米国の製造業は、設備増強のために必要な政府契約をより簡単に獲得できるようになる」と指摘した。企業が中国などからの輸入品を避けて、米国内で生産を広げる動機になると期待する。

国内の製造業への金融支援も増やす。政府機関の米輸出入銀行が今春、半導体やバイオ医療品、再生可能エネルギー関連製品などの製造・輸出を手掛ける企業への新たな支援制度をつくる。

バイデン政権は緊急度が高い品目では既に動いている。大統領令では半導体やレアアース(希土類)などは100日以内に戦略をまとめるよう指示していた。

半導体では520億ドルの補助金制度を設けるよう議会に働きかけている。上下院が早期可決を目指し、法案の一本化に向けた作業を進めている。レアアースでは国防総省が22日、国内で一貫生産できるよう企業に補助金を出すと決めた。

安定した調達先の確保は喫緊の課題だ。米政府高官は23日、記者団に「ウクライナ情勢を踏まえると、供給網強化は経済安全保障で不可欠だと明確になった」と強調した。

自動車の排ガス浄化に使われるパラジウムは輸入の4割弱をロシアに頼っており、供給が止まれば自動車生産に悪影響を及ぼしかねない。バイデン政権は、先端半導体の生産を頼る台湾での有事の可能性にも懸念を示してきた。

コストの高い米国であらゆる戦略物資の生産を手掛けるのは現実的ではない。報告書では日米とオーストラリア、インドによる協力の枠組み「Quad(クアッド)」や、アジア各国などと検討中の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通して供給網の相互補完を関係が良好な国・地域と進めるとも記した。

一方、報告書では今回、高インフレの一因となっている物流の停滞への対応策も示した。運輸省は4億5000万ドル(約520億円)の補助金制度を設け、港湾の設備増強を支援する。

米国では供給制約に伴う高インフレに歯止めがかからない。1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は7.5%と40年ぶりの水準に達し、国民の不満が高まっている。

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