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株価支えた「パウエルプット」(NY特急便)

米州総局 後藤達也

パウエル議長の証言とともに株価は下げ幅を縮小=ロイター

23日の米株式相場は乱高下した。朝方にはナスダック総合指数が一時3.9%安となる急落となったが、昼以降に急速に下げ幅を縮め、終値は0.5%安にまで戻した。ダウ工業株30種平均にいたっては上昇して終えた。短期筋の投げ売りに左右された面が大きいが、売りが売りを呼ぶ悪循環を断ち切ったのはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言だった。

取引開始直後、市場関係者の目をさらったのはテスラ株だ。7%安で始まった後、みるみる13%安まで値下がりした。テスラが15億ドル(約1600億円)投資するビットコインの価格が急落したことが引き金となったが、前日までも株価の調整は続いていた。信用取引やコール(買う権利)を取引していた投資家が追加の証拠金を迫られ、投げ売りが連鎖した。

テスラ株は2月に入ってから軟調で、23日の安値は1月に付けた過去最高値を31%も下回る。個人投資家に人気の銘柄だけに、他の多くの銘柄にも波及。時価総額が最大のアップルも一時は6%安となった。

相場の雰囲気が変わり始めたのは午前10時ごろからだ。テスラ株は下げ幅を急速に埋め、アップルやマイクロソフトなど主要IT(情報技術)にも買い戻しが広がった。市場では「朝は短期筋の投げ売りが強かった。だが中長期スタンスの投資家のまとまった売りは続かず、需給の綱引きが一転した」(株式トレーダー)との声が出ている。

その立役者とも言えるのがパウエル議長だ。同時刻から始まった議会証言の冒頭発言で、これまでと変わらず、強力な金融緩和を継続する姿勢を強調した。議員との質疑でも、金融緩和の修正を将来探るような言質を与えなかった。米長期金利はパウエル氏の証言中、緩やかに低下し、株式市場にも安心感を与えた。

債券市場で予想物価上昇率が高まっているものの、パウエル氏は「問題ある水準ではない」と指摘。経済再開が進んでもインフレは「大きなものや持続的なものにはならないだろう」との見解を示した。市場でにわかに高まっていた年内に資産購入の縮小を始めるかもしれないとの思惑をなだめるような形となり、証言が進むにつれ、長期金利は小幅ながら低下した。

2月に入ってからのテスラやIT株の調整は金利上昇が一因とされてきた。企業の将来の収益に逆風となるほか、バリュエーション(投資尺度)の前提となる金利水準が高まれば、年金などの投資家が資金を株式から債券へと移す可能性があったからだ。だが、23日の朝の株安は短期筋の処分売りが中心で、株から債券への大きな資金シフトはみられなかった。一時13%安となったテスラ株も終値は2%安。朝方の急落がガス抜きとなったかのように、「下げたら買い」を掲げる個人の物色も再び増えている。

ただ、新型コロナウイルスの新規感染者が減る中で強力な経済対策が推し進められるシナリオは揺るがない。パウエル氏は粘り強く金融緩和を続ける姿勢を示したものの、予想外の景気過熱やインフレがあれば前提は狂う。23日は株価を支える「パウエルプット」が発揮されたが、雇用や物価の情勢次第ではこのプットの効き目も弱くなりかねない。(ニューヨーク=後藤達也)

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