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バイデン氏、「禁じ手」の石油放出強行 物価高軽視響く

【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は23日、戦略石油備蓄の放出を決めた。「禁じ手」とされるガソリン安を狙った石油放出を強行するのは、物価高が政権支持率の低下に直結しているからだ。「インフレは一時的だ」と主張して対応が後手に回り、国民の信頼が下がった。

「まもなくガソリン価格は下がるだろう」。バイデン氏は23日、ホワイトハウスでの演説で備蓄放出の効果を力説した。市場で決まる価格の見通しについて大統領が直接言及するのは珍しい。「史上最大の放出だ」とも強調し、決断を自画自賛した。

米国は物価高に見舞われている。米労働省によると、10月の消費者物価指数(CPI、1982~84年=100)の上昇率は前年同月比6.2%と約31年ぶりに6%台に達した。6カ月連続で5%以上の伸びとなった。ガソリンだけでなく、食品や医療サービスなど幅広いモノやサービスが値上がりして国民の懐を痛める。

米アトランティック・カウンシルのチャールズ・エビンガー氏は石油放出について「明らかに政治的動機に基づく行動だ」と指摘した。政府が価格に影響を及ぼしやすいガソリン問題に対処し、インフレを退治する姿勢を国民にアピールしたとみる。

11月下旬の感謝祭の休暇シーズンには車を使う機会が増え、一般市民がガソリン高に不満を持ちやすい事情もある。

バイデン政権は春から物価高について「一時的だ(transitory)」と一貫して説明し、対応は後手に回った。物価高の解消に向けて物流を効率化するインフラ投資法案の早期成立を主張。負担を軽くするため子育てや教育支援を盛った歳出法案の重要性を訴え、物価高を政権の看板政策の推進に利用した。

イエレン財務長官は11月中旬、CBSテレビのインタビューで中国製品に対する追加関税がインフレの一因だと指摘。追加関税について「トランプ大統領や彼の政権が不公平な貿易慣習への報復として課したものだ」と語り、インフレの責任の一端がトランプ前政権にあるとも受け取れる発言をしていた。

国民は物価高に不満を強める。米紙ワシントン・ポストとABCテレビの世論調査によると、バイデン氏の経済政策を支持するとの回答は11月時点で39%にとどまり、4月から13㌽下がった。政治アナリストのジョン・ザッビー氏は夏時点で「インフレが続けば無党派層の怒りを買う可能性がある」と警鐘を鳴らしていた。

11月の南部バージニア州の知事選では、無党派層の多くが共和党支持に回り、民主党候補が12年ぶりに敗北した。野党・共和党を支持する保守派団体首脳は「バイデン政権の物価高に対する認識は一般市民の感覚とかけ離れている」と批判する。

バイデン政権はインフレ以外にもリスクや悪影響を過小評価して根本的な対応を先送りするケースが目立つ。

バイデン氏は今夏に米軍がアフガニスタンから撤収しても、同国のイスラム主義組織タリバンが復権する可能性はないと断言していた。実際にはタリバンの復権を許し、撤収間際には自爆テロで米兵13人が命を落とした。

メキシコとの南西部国境で拘束した不法越境者数が1~3月に急増した際にもバイデン氏は「季節性だ」との見方を示した。その後も不法越境者は増え続けて、2021会計年度(20年10月~21年9月)に約173万人と前年度の3.8倍を記録し、過去最高を更新した。

共和党は物価高やアフガン撤収をめぐる混乱、不法移民の急増を取り上げてバイデン政権への批判を強めている。

米リアル・クリア・ポリティクスによると、バイデン氏の支持率は23日時点で41.3%と1月の政権発足以降で最低水準で推移する。22年11月の中間選挙に向けて浮上のきっかけがつかめない。

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