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米、ロシアの3方向作戦警戒 天候がウクライナ侵攻左右

(更新)

【ワシントン=中村亮】バイデン米政権がロシアによるウクライナ侵攻に警戒を一段と強めている。ロシアが隣国ベラルーシと協力し、北方からのウクライナ侵攻ルートを確保。東と南と合わせた3方向から侵攻する態勢を整えるとみる。侵攻作戦のカギを握るウクライナの天候も注視する。

米国防総省は24日、北大西洋条約機構(NATO)が多国籍の即応部隊を東欧諸国へ派遣すると決めれば、米国から最大8500人が参加すると発表した。ロシアがウクライナを侵攻して隣国ポーランドやルーマニアへの脅威が高まる事態に対処する。ウクライナ防衛を任務としないが、ウクライナ侵攻が迫っているとの米政権の懸念を映す。

国防総省でNATOを担当したイアン・ブルゼズィンスキー氏は、米政権がウクライナ侵攻に警戒をさらに高めたのは、ロシアとベラルーシの軍事協力が理由だと指摘する。18日ごろ、ロシア軍が隣国ベラルーシに部隊を送って共同軍事演習「同盟の決意」を実施することが明らかになった。

ベラルーシの協力によって、ロシア軍は軍事演習を目的にベラルーシに駐留し、ウクライナ北方からの新たな侵攻ルートを確保すると米国は懸念する。ウクライナの首都キエフとベラルーシ国境の距離はわずか100キロメートル程度。キエフに向けて進軍する場合の最短ルートと位置づけられ、短時間で作戦を完了できる可能性が出てくる。

このルートでは、ウクライナを縦断するドニエプル川を渡る必要がない。大規模な地上部隊が川を渡れる大きな橋は多くはない。橋を破壊すれば進軍を遅らせることもできる。キエフでは大統領府などの中枢が川を隔てて西側にあり、このルートを選択した場合、同市攻略には原則としてドニエプル川を横切らざるを得なくなる。

米アトランティック・カウンシルが実施するSNS(交流サイト)分析によると、多連装ロケット砲の発射装置などを積んだロシアの鉄道が17日、ベラルーシ南部に到着した。鉄道はロシア極東地域を出発していた。軍事演習を目的に遠く離れた極東から大規模に兵器を輸送するのは珍しいとみられ、侵攻に向けた準備との懸念を増幅する。

南部では、バルト海を最近出発した複数の揚陸艦がウクライナの面する黒海に入るとの懸念が広がっている。揚陸艦は上陸作戦に使う。米軍事メディアによると、英仏海峡を越えて地中海に向かっている。その後に黒海に入れば、ウクライナ南部での上陸作戦の選択肢が出てくる。これとは別に南部クリミア半島にはロシア軍部隊がすでに集結しているもようだ。

ウクライナ南部には海上物流の要衝オデッサがある。米戦略国際問題研究所(CSIS)のセス・ジョーンズ上級副所長らは1月中旬のリポートで、ロシアがウクライナの海上物流を遮断する場合にはオデッサの制圧が必要だと指摘した。上陸作戦で物流を混乱させ、ウクライナにロシアの要求を飲ませる戦略も浮上する。

米国はウクライナ東部の国境付近にもロシア軍が展開しているとみる。親ロシア派武装勢力はウクライナ東部ルガンスク州やドネツク州の一部を実効支配しており、東部ではロシアの影響力がもともと強い。ロシア軍は21年春ごろにも東部付近で部隊を増強していた。

米中央情報局(CIA)でロシア担当の上級分析官を務めたアンドレア・ケンドルテイラー氏は、ロシア軍がさまざまな方向から進軍してキエフの包囲を計画している可能性を指摘する。米欧やウクライナとの協議で強い立場を確保し、ウクライナのNATO非加盟などを求めるとみている。

ロシア軍は3方向に展開し、ウクライナ軍の分散を誘っているとの見方もある。米国防総省のカービー報道官は18日の記者会見で「(ロシアの)プーチン大統領は複数の選択肢を得ている。最終決定をしたとは思わない」と話した。ウクライナ軍の防衛態勢も踏まえ、作戦を決める可能性がある。

ウクライナ侵攻は天候にも左右される。バイデン米大統領は19日の記者会見で「地面が凍るまでプーチン氏は少し待たなければいけない」と話した。

陸軍部隊が冬にウクライナで進軍するには、地面が凍結して安定する必要がある。米国では1月中旬時点で、ウクライナの地面が十分に凍結していないとの見方が多い。例年では地面が凍結しても3月中に解け始めて地盤が緩みやすくなる。ウクライナでの冬場の地上作戦に適した期間は長くない。

バイデン政権はロシアが示した欧州の安全保障体制構想に対し、週内に書面回答する。その後に米ロ外相会談を開く予定だ。NATOやウクライナをめぐる米ロの隔たりを埋めるのは簡単ではない。

畔蒜泰助・笹川平和財団主任研究員(ロシア外交・安全保障)の話 ロシアの狙いは米国主導で構築した欧州安全保障秩序の再編だ。同国のプーチン大統領は、米国を交渉の席につかせるためウクライナを実際に侵攻するのは得策ではないと考えているのではないか。

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